第11話 夢の芽11

 服部と藤林が不穏な雰囲気に包まれている。藤林はすでに六角家の城攻めから戻ってきており、服部との国境に結界を張ったと言う。だが服部宗家は慎重で事件の起こった別宅に探索隊を入れている。今日は抜け忍頭魁に母屋に呼び出されている。

 魁の横に小頭が座っている。

「下忍の2人は覆面していたが、茉緒はどうだ?」

「私は仕事の時は化粧に手を加えています。あの時はこの化粧でした」

 茉緒は何十と言う化粧型を紙に描いて記録している。小頭も同様にしている。

「やはり幸作か」

 幸作は大半が長期的に潜入して手引きすることが多い。この場合化粧を施し続けるのは難しい。

「実は幸作の特徴を女中が服部の探索に伝えたのだ。まだ似顔絵を見ていないがしばらく幸作を母屋に閉じ込めよう。茉緒もあの時の化粧はするな」

「私が使った短刀は?」

「あれは藤林の女忍の抜け忍が持っていたものだ」

「藤林の抜け忍がいるのですか?」

「知らなかったのか?今回抜け忍狩りで右腕を失った絹だ」

 絹。凛が助けた40歳過ぎの大年増だ。

 母屋を出ようとして背中から飛びついてきたものがいる。ものの見事に土間に一回転して気絶している幸作だ。もし母屋でなければ確実に切り殺していただろう。

 茉緒は今は絹のことしか考えていない。



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