第9話 夢の芽9

 抜け忍狩りの後茉緒は今回小頭の組に入れられた。これで一人前の忍者になったわけだ。息子の幸作が入ったのは気になるが。さっそく指令が出てそれぞれが旅に立った。今回は服部の一豪族の探索だ。茉緒は夜のうちに尾根を抜ける。藤林の塀を乗り越える。お館はまだ城攻めから戻っていない。

 屋根裏に潜り奥方の部屋の上に出る。茉緒の夢の中に母の顔が浮かんできたのだ。それが藤林の奥方に似ている。だが夢の中の奥方の顔が見にくく笑っているのだ。父の術がかかっているはずだ。

 節穴からはこんもりと膨らんだ蒲団が見える。その蒲団が捲れて白い肌が見える。若い男を組み敷いて体を揺すっている。藤林のお方ならば40歳を超える大年増のはずだ。下で喘いでいるのは20歳そこそこの若造だ。

「親父に知られると」

「親父と言うな。お館はしばらく戻って来ぬ」

 藤林に死んだ息子以外はいないはずだ。ひとしきりすると男は着物を着て部屋を出ていく。茉緒は慎重に跡を付けて行き背中から組み敷く。

「名前は?」

「平太」

「親父は?」

 黙っているので殺す勢いで首を絞める。

「死んだ小頭の息子だ」

「ならどうして親父と?」

 その時耳元を風が吹き抜けた。ほとんど同時に体を伏せて草むらに転げた。

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