第7話 夢の芽7

 久しぶりに村に人が溢れる。外働きの忍者が呼び戻されている。昨夜藤林の館に張り付いていた女忍も知らせを持って帰ってきた。六角家の城攻めは難航しているらしく、別部隊と近隣の豪族から集めた50人が来るようだ。

 茉緒は4人の女忍と年寄り5人を連れて朝からまやかしの道に仕掛けをする。その仕掛けをきっちり地図に落とし込んでお頭に渡す。それによって仕掛けのない道を使って攻めるのだ。丸一日かかって仕掛けを終えると、頭の母屋の戦の宴の手伝いに出る。

「いいけつになった」

 茉緒の尻をぴしゃりと叩く。頭の魁の長男の幸作だ。茉緒の2つ上で腕はからっきしで女たらし専門だ。茉緒も凛も術の指導で抱かれたことがある。虫唾の走る男だ。

「どうだ。柘植は?」

 茉緒は頭の唇を読んでいる。隣に座っているのは柘植からの抜け忍の小頭だ。顔の知っている限り彼が一難強い。それで長女をあてがっている。

「ここも服部とうまく行っていないので狙いなんですがねえ」

 頭の魁は服部の抜け忍だ。抜け忍村でもすべてを敵にしては生きていけない。どうも藤林の仕事は柘植から出たようだ。

「藤林を襲うことは?」

「ないでしょうね。元々は仲が悪くなかったのですが、柘植では藤林が別人になったようだと言っています」

 幸作が凛を捕まえて酌をさせている。それからおもむろに立って凛を納屋に連れ込む。茉緒はそっと後ろを付いて行き納屋に入った途端眠り薬をかかせる。

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