第6話 夢の芽6

 この抜け忍村は無数あるまやかしの道から逸れた滝壺の奥にある。まやかしというのは獣道だ。だがどれもが村に繋がらず地獄谷に向かっている。その滝壺の奥に蛇道のような通路があり源蔵爺の小屋はその道を塞ぐように立っている。

 凛と野草を摘みながら炭焼き小屋を覗く。

「こら来るなというてるに」

と言いながら顔は笑っている。昔はお祖母ちゃんとも組んで外の仕事をしていた。

「ここに外から忍者が入ってきたことは?」

「儂が小屋を建ててからはないあ」

「15年前?」

「お前を運んできた男だな。あの頃は小屋もなく通り抜けられた。だがあのものはなかなかの男だった。まやかしの道を抜けれるものはそういない」

「あの頃藤林で大火事があった?」

「あった。茉緒は藤林に行ったのだそうだな。その男も顔中火傷だったわ。だが致命傷は脇腹の一刺し。お婆が大切に飾っている刀はその男のものだ」

 あの刀が父の刀なのか。

「藤林が来るとなると全員駆り出されるぞ」

 茉緒は黙って米の袋を一つ置いて外に出た。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る