第14問 伸び悩んだときどうするか?


 中学2年、2学期。

 中間テストの結果が出揃った後。

 テントリにて。


「勇気~! 今回も400超えたね~!」

「もう400の壁は破ったな」


 テントリの先生たちは、僕のテスト結果に喜んでくれた。


 テストが1つ、また1つと返ってくる度に「どうだった!?」と気にかけてくれるし、いい点を取ると我が事のように喜んでくれるから、僕も嬉しい。


 嬉しいけど……。

 満足はしていない。


 むしろ危機感すら持っている。


 2年に上がってから、テントリの先生たちの熱心な指導のおかげで成績が一気に上がった。


 でも、400点を超えた先――上位の壁ってやつを前に、足踏みしている。


 今は400点を安定して取れるようになったからか、心のどこかで「これくらいやれば400取れる」と慢心さえしてる……。


 重ねて言うが、400点を超えられようになって、僕自身もすごく嬉しい。

 でも80点、90点を取れるようになってきたから、60、70点台が悪い点数に見えてくる。


「うわ~、60点か~」


 って武蔵から全力でテスト用紙を隠すくらい落ち込む。


 1年生の頃だったら「よっしゃ60点!」「俺天才かよ、70点!」と浮かれてたかもしれないけど。


 要するに、僕はもっといい点を取りたい。

 自分がこんなに勉強に対してどん欲なやつだとは思わなかった。


 これもテントリに来たおかげかな?


 勇気先生は大きな目標を常に意識させようとしてるし。

 最近なんて「勇気も俺と同じ川高かわたか目指そうな」と言ってくる。

 いや川高はオール5に限りなく近くないと安心できないでしょ。僕の内申は中学2年の1学期で「39」だ。


 ともかく。


 中学2年1学期の期末テスト、そして2学期中間テストの結果を受けて、僕は次の期末テストで今までと違う目標を立てることにした。


 それは――


「学年10位以内に入る」


 僕の新しい挑戦が始まった。



    * * *



 学年10位以内。

 これをクリアするためには5教科合計で450点を越えればいい。

 なぜなら僕の中学で常に450点を越えるのは《五神かみファイヴ》の5人しか存在しないからだ。

 テストによって《五神》+1人、2人と450点を越える生徒がいるが、基本的には《五神》だけなのだ。


 450点。

 平均90点以上か。


 社会と数学、あとは理科も90点は取れるかな。

 でも……。


 英語と国語はちょっと厳しい。

 特に国語。


 400点を越えられるようになった僕だが、各テストの点数を見ると英語と国語が芳しくなかった。

 明確な弱点だ。。


 これが上位に来てから合計点も順位も伸び悩んでいる原因だろう。


 英語は60点台後半から70点台後半。

 国語は60点台からギリギリ70点。


 英語はテントリで単語を覚えさせられた甲斐あって点数が伸びてきたけど、80点は越えられずにいる。まだまだ基本的なところを徹底できてない感じだ。でも、テントリの授業で着実に改善されている実感がある。未来は明るい。


 でも国語は……。

 90点どころか80点を取る自分を想像できない。自分の想像力が足りないだけかもしれないけど。未来は暗い。


 国語、どうすりゃいいんだ……。


 放課後、テントリにて。

 僕は国語の授業を受けていた。


 僕の国語を担当するのは若い女性講師、サナミ先生。

 髪を染めてて、黒いスーツでびしっと決めてるめちゃくちゃ綺麗な人だ。

 実はこの人、勇気先生の妹で、拓基ひろき先生のお姉さん。

 坂本兄妹、全員集合!

 いや、実はまだほかに妹とか弟とかがいたりして!?


 サナミ先生は印刷してきた文章問題を僕たちに配り、時間を決めてそれを解かせる。で、「この問題は~」と解説しながら答え合わせ……大体このパターンで授業が終わる。


 正直に言うと、僕はすごく不安だった。

 この授業を受ける意味はあるのか、って。


 僕は与えられた文章を読み、問題を解いていく。

 このときは無心になれる。


 でも、たまに授業中にこんな考えが浮かんでしまう。


 学校のテストに出ない問題に授業一コマ全部使って……と。


 不安だし、不満だった、

 

 まあ、テスト前になればテストに出題される教科書の文章を読み解き、「こういう質問が来たらこう答える」みたいなマニュアルを教えてくれるけど。


 僕はテストで、国語でいい点が取りたいんだ。

 普段からもっとテストの点に繋がる授業を受けたい。


 いい点を取りたい。そう思うことは間違ってないはずだ。


 だからある日、授業が終わったタイミングで。

 僕はサナミ先生を捕まえてこう言った。


「この授業で、いい点取れるんですか?」


 サナミ先生を貶めつもりはなく、純粋な疑問から出た言葉だった。



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