2ページ

「葉っぱを、よく見ると、ハートの形になっているんです。蔓に沢山ハートの葉っぱがなりますから、ミリオンハートと言う名前なんです」

「そうなんですね」

「はい。育てやすく、多肉植物で見た目にも可愛いので、こういうハンギングプランターにピッタリなんです」

 さっきまでタドタドしかった口調がスラスラと饒舌になる。男性はそれに気づいていないようだ。

「物知りなんですね」

「あ、いえ、その、家で少し、育てているから、ちょっとだけそういうのを、勉強しているというか」

 またぎゅっとバッグを抱いた男性は小さく呟いた。

「男なのに、気持ち、悪いでしょう?」

 すみません、とそう言って頭を下げる。細身で背が高いからか、その姿は今にも折れてしまいそうに見えた。

「いいえ、とんでもない」

「・・・え」

「とても素敵ですよ」

「そ、そんなこと」

「そんなことあります。とってもあります。男だから植物を好きなのは変だなんて、そんなこと全くありません。だって私の知らなかったミリオンハートのことを、貴方は教えてくれたでしょう? それってとても素敵な事だと思うんです。それに、植物を愛することのできる方は、とても心優しい方だと思います。私も含めてね」

 ふふふ、と微笑んでみせると男性は困ったように小さく微笑んだ。それはまるでミリオンハートの小さな小さな白い花のように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る