第4話

「三か月前の仕事の時、私がいなかったら、死んでたでショ?!」

「お前がいなけりゃ、死にかけもしなかったわ!!」

 夜の静寂。フクロウが鳴く。時計塔の窓から、月がこちらを覗きこむ。

「だって、私、死神だし、サ」

 三日月が笑った。

「ホント、消えろ」

 色気のある林檎は殺し屋の手の中。

「お前に渡さない。俺の林檎だな」

 台所で殺し屋は林檎を洗う。透明な水を通して林檎の赤さが歪む。

「そういや、お前どうやって林檎を食うんだ?」

 背中越しで殺し屋は死神に聞いた。死神は部屋の真ん中でウロウロしていた。

「聞いちゃう?聞いちゃうノ?マジ、聞いちゃウ?」

「殴る」

 堅くて乾いたものを叩いた音が響く。死神が床に倒れこむ。

 どうやら死神にも痛覚はあったようだった。眼球の穴から、涙が少しにじみ出てた。

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