支配

蒼井裕香

支配

ほうじ茶プリン、美味。


黒蜜がカラメルみたいにほろ苦く、ほうじ茶の香ばしさを引き立てている。


あぁ、おいしい。


あたたかいそば茶のおかわりをいただいてしまった。しあわせな空間だ。はぁ。


時が穏やかに、店内のBGMのとともに流れていく。

たしかに流れているのだ。

透明な壁と、壁に隔たれた二層の空気の向こうには色とりどりのお相撲さんたちが制限速度を少し無視してせわしなく突進していく。個人練習中だろうか。突っ張り合うようなことがないことを願おう。


何気なく何かを見て、この模様のように人はどこかで繋がっているのだろう、などと考えたり、それ以上に連想する度、

「なにを格好つけて」

「気取っちゃって」

と自嘲的になってしまうのだが、だが。

これは誰かに「そう考えろ」と言われたわけでも、そそのかされたわけでもない。

たしかに自分の脳みそが感受していることなのだ。

何かに影響されている可能性も大きいが、やはりわたしが、わたしの脳が生み出す価値観なのだ。

「本当にそんなこと思うの?考えたの?」

と思うことも、きっと思われることもあるだろう。

もしそうであっても、嘘であったとしても、その考えや言葉はわたしの中から引き出された、その瞬間だけの、わたしだけのものなのだ。

テンプレートのように同じ内容を繰り返しても模倣しても、オリジナルは二度と再生されない。

その反復も模倣もその瞬間だけの「オリジナル」なのだから。

この世に同じものなど、存在しないのだから。


ピンク色に染められた革袋、いや、交尾を邪魔された牛の亡骸に寄生された女の子の道のりはまだまだ、途方もなく険しいようだ。

少し散歩でもしようか。ごちそうさまでした。

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支配 蒼井裕香 @SaKuBoU_5221

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