ピジョンブラッド②
勝ち残れば生きることが出来る。
勝ち残るためには人を殺さねばならない。
俺にそんなことが出来るのか?
人をこの手で…?考えただけで吐き気がする。人が死ぬところなんか見たくない。
殺らねば殺られる。どうしたらいいんだ。
夜が明けたようだ。食事が運ばれてきた。
アメジストが言うに、食事は朝と晩の2回のみらしい。昼間はコロシアムが行われるから、とのことだった。
毎日メニューは違うらしい。栄養バランスもそれなりに考えられているものだった。
肉に野菜、魚の日もあるそうだ。
ここに俺たちを監禁した輩は、俺たちを育成しているように感じた。
料理から殺意は全く見えなかった。
大まかなコロシアムのルールはサンドロップが教えてくれた。
ランダムで武器が配布され、それを使い戦うそうだ。
何種類の武器があるのかはわからない。
サンドロップが使用した武器は盾と槍のセットだったそうだ。他の宝石たちは大槌、鎖鎌、短剣と盾だったそうだ。
両手で使う武器もあれば、片手に武器、もう片手に防具。そんなパターンもあるらしい。
武器の把握は俺自身がコロシアムの舞台に立たない限りはわからなそうだ。
食事が終わると、運営側らしき人間が食器類を下げにやって来た。
下げ終わると、そいつは俺の隣(サンドロップではない方)の檻の前に仁王立ちし、響く声で叫んだ。
「オパール!!今日はお前の番だ!!正々堂々とコロシアイ!命にすがりつくんだ!」
指名した後、そいつは戻っていった。
サンドロップは言った。
「あいつはいつも、そう言い指名していくんだ…。俺の時もそうさ。俺はあの台詞を何度聞いたことか…。」
「おいオパール!!せいぜい生き残ってくるんだな!!待ってるぜ!ケヒヒヒ!」
アメジストは人の死を楽しむかのように不気味な笑い声をあげた。
暫くして、オパールと呼ばれたその人は檻から連行されていた。初めてオパールと言う女の顔を見た。女だったのだ。女もコロシアイをするのか。
「おい、サンドロップ。女も混ざっているのか?女も殺さねばならないのか?」
「あぁ、そうだよ…。女も男もごちゃ混ぜさ…。俺の時も女が1人いたものさ…。まぁ、そいつは他の男に殺されていったがな…。殺るしかないのさ…。」
サンドロップの声は少し震えているように感じた。怒り憎しみ悲しみ全てが混ざったような声で。
俺は男だけでなく女も手にかけないといけないのか?生き残るためには?それしかない?
「俺は…人を殺せる気がしない…。」
「大丈夫さ…。俺もそう思っていた…。でもな、イザとなれば勝手に体が動くものさ…。お前さんも…そのうちわかるさ…。」
それから口を開くものはいなかった。
怖くて仕方なかった。
殺されるかもしれない恐怖と殺さねば生き残れない恐怖。それに、生き残れるという保証はどこにもない。噂を頼りに、進んでいくしかないのだ。その噂が俺たちの希望なのだなら。
殺シアム。 砂糖味の砂糖 @syuga-nyaruko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。殺シアム。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます