第8話 二人のシンデレラpart8
「君も、守りたい人を守れなかったんだね」
レヴォルの中に直接語りかけてくる声。
「でも、まだ彼女は死んじゃいない」
彼は、遥か遠くから導かれた存在。
「力が、欲しいよね、そうすれば彼女達を救えるんだし」
ここにいるけど、ここにいない夢写しの陽炎のような曖昧な魂。
「僕に
レヴォルは、いつの間にか握られていたその栞を掴むと、迷わず本に挟んだ。
「「
「・・・っ、その姿は、忌々しいのだわぁ」
それはノインとよく似た、透き通るように爽やかで、地味な青年。
かつて剣士を目指し、仲間と共に旅をして、やがて語られるようになった英雄。
「もうすぐ零時、
英雄は静かに剣を構えた。
それは多くの英霊と
レヴォルのこれから歩んでいく道のりの、ずっとずっと先にある極致。
そんな英雄の記憶が、経験が、
「貴方に邪魔されるのは、我慢ならないのだわぁ」
カオス・シンデレラは地面が爆発したかと思わせるような跳躍を持って、英雄に襲いかかった。
ガキン
鍔競り合う中必死の形相で睨み付けるカオス・シンデレラをこんな時ですら英雄は美しいと感じていた。
シンデレラの美しさとは外見だけではない、例えどれだけ虐げられようと痛めつけられようと汚されようとも、綻びることの無い金剛石のような内面が、シンデレラを輝かせるのだ。
それは
女帝は、原典に限りなく近い存在のシンデレラなのだった。
久しぶりに
「イライラするのだわぁ、今すぐ消し去りたいのだわぁ・・・滅べ!」
カオス・シンデレラは冷気を剣に込めると、暗黒の
城が縦に両断されるほどの一撃。
天井は破れ、地面は凍りついた。
しかし、英雄はそれを受け止めていた。
「
前代未聞、中に英雄の魂を残したまま、英雄の意思で行われた
それは英雄が空白の運命の持ち主だからこそできる裏技的接続
「うおおおおおおおお、焼き尽くせええええええええ」
イグニスの必殺技、
無数の炎の渦がカオス・シンデレラを包み込む。
「くっ、こんな炎!」
まるで太陽のプロミネンスのように燃え盛る炎を、剣戟の竜巻にて相殺する。
「今だ、
炎に気を取られたカオス・シンデレラの頭上から、イグニスから再び入れ替わった英雄が斬りかかった。
「な」
カオス・シンデレラの目が驚愕に見開かれる。
真っ直ぐこちらに飛び込んでくるその姿に、かつての幼なじみの姿が思考を妨害する。
心の支えとなってくれて、本当はプリンセスになることよりも、彼の側にいたいとさえ思わせた人。
私の運命を狂わせないために、別れも告げず去って行った人。
なのになんで今さら・・・っ。
カオス・シンデレラは逡巡し、その一瞬の隙が仇となった。
時間が止まったかのように静寂な一瞬の後、決着は着いた。
「こんな結末、あんまりなのだわぁ、最悪なのだわぁ・・・」
カオス・シンデレラはそう言い残すと、魔法は解けて、元の王妃に戻った後、何処かに吸い込まれた。
「ごめんね、シンデレラ」
英雄も、それで役目は終えたのか、
挟まれていた導きの栞も、ふわりと消えた。
激しい戦闘の余波に耐えきれなくなって、城が、崩れ始める。
「まずい、皆を運ばないと・・・」
レヴォルは疲労で震える体に鞭を打ちながら、体を起こすが。
「だめだ、持ち上がらない」
それでも一人として運ぶことは出来なかった。
「ここまでか、すまない、みんな・・・っ」
せめてエレナだけでも瓦礫から守ろうと階段の裏まで運ぼうとすると。
「・・・!?、急に体が軽く、それに体も頑丈に」
夢でも見ているのかもと思ったが、これは
それはレヴォルだけでなく、瀕死だったエレナ、アリシア、ティムにもかけられたようだ。
「みんな、早く脱出するんだ、ここは危ない!」
目を覚ました三人にそう促しながら、彼は今尚目を覚まさない彼の体を背負った。
ノイン、シンデレラが消えた今、彼が唯一手掛かりとなるが、当然、レヴォルはそんな打算的な理由で彼を助けるわけではない。
降ってくる瓦礫を浴びながらも、危機一髪、レヴォル達は崩落する城から脱出した。
「御愁傷様~♪なんてね、ちょっと遅刻しちゃったけどなんとか間に合ったようね、はてさて、ここからも頑張ってくださいよ~」
木々の隙間からレヴォル達の無事を確認して、彼女は夜闇の中に溶け込んだ。
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