Bingの壁紙シリーズ

@kait_atc

1つ目

僕は一息をついた。


 肺に溜まっていた二酸化炭素を一気に吐き出し、新鮮な空気を吸い込む。

もう一度吐き出すと、呼気はほとんど正常に戻った。

大きく背伸びをするようにストレッチをする。すると目の前に夕日に照らされた巨大な橋、ニューヨークのシンボル、ブルックリン橋が現れる。

 自宅から半刻ほどランニングしていたところ、ふと思い立ち立ち寄ってみたところだ。


 ここしばらく縁がなく、こうして横からこの橋を眺めるのは、半年、下手をすると1年ぶりかもしれない。

 そのせいか、あたりを見渡すと覚えのないものが目に入る。


小屋だ。

ただし、ただの小屋ではない。

まるで、ステンドグラスのように色とりどりのアクリルが壁面を彩っている。

 もう沈みかけた夕日に照らされまるで、宝石箱、あるいはお菓子の家かもしれない。

食べれもしないし、魔女も大きな鍋もない、そもそも立っているのは森ではなく大都会ニューヨーク。そして僕はヘンゼルでもグレーテルでもない。パンくずの代わりにgoogleが道標を残してはいるけども。


周りを歩く。見ようによっては新手のビニールハウスかもしれない。あいにく何も栽培してないが。

代わりと言ってはなんだが、地面からライトが生えている。

夜間は日の代わりにこれで照らすのであろう。そのためかすべて地面を照らすように下を向いている。

あるいはこれが花なのかもしれない。


 何かのイベントか、あるいはアート作品なのだろう。

気になったので手持ちの端末で検索をしてみる。あった。


 庭のある小屋、いや、庭が主体とするのならば小屋付きの庭か。

デンマークでの文化らしい。本来であれば5つ以上の区画があり、コミュニティとなっていること。小屋は休憩や軽食などが作れるようになっているものが多いそうだ。

 この小屋では流石に休憩や軽食は取れないが、なるほど。確かにニューヨークはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランド5つの区画に分かれている。

 製作者はニューヨーク出身のアーティスト。テーマはゴミ。

どうやらこのステンドグラスは(分かってはいたけども)グラスではなく不要になったアクリル樹脂らしい。

しかし、ゴミと言うテーマか。

これはまだ使えるものをゴミとして捨てているということを、コミュニティに(あるいはコミュニティとして)置くことで問題提起をしているのだろうか?

製作者のことをよく知らない僕にはわからないことだ。


だがブルックリン橋とこの小屋という景色には妙にマッチするものがある。

端的に言うなれば、ありふれた言葉であるけれど美しい。そう言っていいだろう。

これが夜ライトアップされた姿というのもまた綺麗だろう。あるいはこのカラフルなアクリル樹脂を通して見るニューヨークの夜景、というのも良いのではないだろうか。

そこまで考えると踵を返す。

さて帰ろう。

物思いに耽ったせいか汗が引いて少し肌寒くなってきた。

帰ってシャワーを浴びて食事にしよう。


そう思うと僕はブルックリン橋とカラフルな小屋に背を向ける。

もうすぐ日が沈む。








元ネタ

Bingの壁紙

ブルックリン橋とコロニヘーブ,2010

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