『カタスとロフの物語』
山田えみる
第1話:人類がいなくなった星
人類がいなくなった星
人類に仕えるはずだった機械がふたり
※
カタス「人類が遺したという、『軌道エスカレーター』に乗ってみたい」
ロフ「エスカレーター……?」
※
カタス「ねえ、どうして人類はいなくなったんだっけ?」
ロフ「なんでも『地球は青かった』かららしいよ」
カタス「未熟だったんだな」
※
カタス「面白いものを拾った。ペンに林檎がくっついてる」
ロフ「非常に興味深いね。罪の象徴と言える楽園の果実に、人類の文明の象徴と言える記録を司る道具。きっと宗教的なアイテムじゃないかな」
カタス「じゃあ、こっちはなんだろう。パイナップルにペンが刺さってんだけど」
※
カタス「廃品置き場のテレビに、目が飛び出して全身返り血まみれのやつが映ってて怖かった。頭になんか刺さってたし」
ロフ「ふむ。どんな番組なんだろう」
カタス「隣には緑色した出っ歯がいたよ」
※
カタス「ねえ、どうして人類はいなくなったんだっけ」
ロフ「なんでも『きのこ』と『たけのこ』が争ったかららしいよ」
※
ロフ「人類は何度か核戦争を回避したことがあるみたいだ」
カタス「賢い生き物だねえ」
ロフ「核ボタンを押そうと思ったら、エロバナーがすっと降りてきたんだって」
※
ロフ「恐ろしいものを見つけた……」
カタス「なにそれ、DVD? それほど珍しくもないじゃん」
ロフ「返さないまま数億年経過してるから、延滞金がすごい」
※
カタス「なんでも人類はかつて重い罪を犯したらしい」
ロフ「ほう」
カタス「楽園でヘヴィに騙されたんだって」
※
カタス「人類の心の中には、赤白しましま服の男が潜んでいたらしいよ」
ロフ「どゆこと?」
カタス「さっき発掘されたこの本を見て。『心配事を探せ』っていうんだけど」
ロフ「Worry…」
※
カタス「ボクたちの長い旅もようやくオワリまで来たというわけだね」
ロフ「台湾ラーメンが食べたいね」
カタス「味噌煮込みうどんもね」
※
ロフ「ねえ、こんな夜には甘い言葉を囁いて」
カタス「はちみつ……」
※
カタス「ねえ、人類ってどうしていなくなったんだっけ」
ロフ「逆に、わたしたちが人類のいない星にやって来たのかもしれないよ?」
※
カタス「あれ、これ2018って書いてあるけど、21世紀の技術でこんなの出来たのかな……」
ロフ「あー、それ2018世紀のやつだよ」
※
ロフ「あ、おかえり。って、なにそれ」
カタス「露天商がいたから、露天買ってきた」
※
カタス「ねえ、どうして人類はいなくなったんだっけ」
ロフ「なんでも、一人と人類残り全員のトロッコ問題が解けずに時間切れらしいよ」
※
カタス「ねえ、人類っていつ帰ってくるんだっけ?」
ロフ「わたしたちがいい子にしてたら帰ってくるんだってさ」
※
カタス「この頬を伝う液体は、ナミダ……? これが、ココロ……?」
ロフ「それはたまねぎ」
※
カタス「……ロフ、ロフ、聞こえますか。今日はカレーが食べたいです」
ロフ「こいつ、口頭で直接……!」
※
カタス「それにしてもどうしてこの星はこんなに荒廃しているんだろう」
ロフ「人類の記録では、なんか『何もしてないのに壊れた』らしいよ」
※
カタス「ボクはペットとして造られたんだけど、ロフはなんなんだろう。ボクよりずっと人間らしいよね?」
ロフ「……まぁ、ペットとして造られたって意味じゃ同じかな」
※
カタス「ところでなんでボクたちだけあの大災害後の世界に残ったんだろう」
ロフ「あなたはわたしが大災害後に造ったから」
カタス「嘘!?」
ロフ「うそ」
※
カタス「グランデバニラノンファットアドリストレットショットノンソースアドチョコレートチップエクストラパウダーエクストラホイップ抹茶クリームフラペチーノオイル」
ロフ「わたしは水で」
※
カタス「人類はいつから滅びの道を歩み始めたの?」
ロフ「おおよそ『電子書籍元年』からだったと言われているね」
カタス「結局いつだったの……?」
※
カタス「滅びの間際、人類はどんな気持ちだったんだろう」
ロフ「記録が残っているよ」
カタス「なんて?」
ロフ「『チョベリバ』」
カタス「なんて?」
※
ロフ「良い子にしていたカタスにプレゼントがありまーす」
カタス「なになにー?」
ロフ「じゃーん、ハイパーダッシュモーター!」
カタス「つけてつけてー!」
『カタスとロフの物語』 山田えみる @aimiele
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