ずっとそばで見守っているよ
コニー
第1話
ひまわり公園
あるところに楽しみ方を忘れた一輪のひまわりが咲いていました。
蝶々が話しかけても、大好きな雨が降っても、そよそよと春の穏やかな風が吹いてもひまわりの花びらはいつもしょんぼりしていました。
ひまわりはきれいな池のほとりに咲いていました。
そこへ一人の少女が通りかかります。
少女は事故で両足を失っていました。でもとっても元気。
歌が大好きな少女は、なんとなくひまわりの咲いている場所が気に入って、毎日のようにその場所に行くようになりました。
少女が何気なく歌を口ずさむとひまわりは見違えるように生き生きとしてきました。
少女はひまわりのそばできれいな袋を見つけます。袋の中には色とりどりのキャンディーが入っていました。
ある日、少女の元気がありません。お母さんが病にふせってしまったのです。
お母さんは病院へ入院することになりました。
お母さんが入院している間、少女は施設というところで過ごすことになりました。
施設は広くてたくさんの人がいました。
でもお部屋もなくて、お布団は毛布1枚だけ。寒くて少女はなかなか寝付けません。
おなかのすいた少女は、ひまわりのそばで見つけたキャンディーの事を思い出しました。
耳元でキャンディーを食べてごらんと声が聞こえました。
少女は黄色いキャンディーを食べてみました。
すると目の前に、たくさんのお菓子が現れました。
世界中のお菓子と色とりどりの風船が空いっぱいにふわふわと浮かんでいました。
少女は好きなお菓子を食べておなかいっぱいになって眠りにつきました。
次の日少女は、赤いキャンディーを食べてみました。
やわらかな香りに包まれたばらの花びらの部屋が目の前に現れした。
赤い花びらの部屋、ピンクの花びらの部屋、黄色い花びらの部屋。
花びらで作られたお布団は、暖かくていい香りがします。
少女はその晩もぐっすり眠ることができました。
オレンジのキャンディーを食べてみると森林の世界が現れました。
大きな葉っぱの上には雨の滴が落ちていて、緑が生き生きとしていました。
すがすがしい雨上がりの土の匂いがします。
リスやウサギ、赤い鳥、青い鳥、ライオンやホワイトタイガーいろんな動物たちがいました。
その世界では、空気が飲み物、食べ物だったので、みんないつもおなかいっぱいでした。
猛獣でさえ他の動物を攻撃する事はありません。
少女はホワイトタイガーの背中に乗ったり、空まで届くかと思うような高い木に登ったり、丘を滑ったり、楽しいひと時を過ごしました。
緑色のキャンディーは四葉のクローバーの世界。
少女は四葉のクローバーで敷き詰められたじゅうたんの上で、お母さんが元気になりますようにとお願いしました。
青いキャンディーは、ふわふわの雲が広がっている世界でした。
雲の間から、きらきらした光が差し込んでいました。
少女は雲に乗っていろんな所へいきました。
藍色のキャンディーは真っ白な雪と星空の世界。
静まり返ったその世界で聞こえてくるのはふくろうの声です。
積もった雪の上に寝そべって流れ星を数えていると気分がわくわくしてきました。
紫色のキャンディーはラベンダーの世界でした。
キャンドルの灯りとラベンダーの香りに包まれると、少女はどんなに寝付けない夜でも、ぐっすり眠る事ができました。
不思議なキャンディーはいつまでたってもなくなる事がありません。
少女はキャンディーのおかげで毎日を元気に過ごせるようになります。
3月11日。
ある国で大きな災害があってたくさんの人達が大切な人や家族、ペットを失いました。
大きな木も、建物もみんな被害にあったのですが、なぜかそのひまわりはぽつんと残っていたのです。
少女のお父さんもその災害で亡くなりました。
キャンディーはお父さんの魂が少女のために用意した贈り物だったのです。
少女が見えない力に支えられている気分になるのは、亡くなったお父さんがずっと少女のそばにいて見守ってくれているからでした。
全ての人へ亡くなった魂からの贈り物は用意されています。
雨上がりに見える七色の虹だったり、誰かがお水をあげたわけでもないのに咲いている道路沿いの花々だったり。
少女の耳元でお父さんの声がしました。
いつでもそばで見守っているから、何にも悲しむ事はないんだよ。
少女はひまわりのそばに、種をまきました。
数週間たつと、たくさんのひまわりの花が咲いてきました。
一輪だったひまわりは、大きなひまわり畑になりました。
悲しみを取り除くことができると言われるその場所は、ひまわり公園と名づけられ、
今でもたくさんの人の心を癒してくれています。
公園にはこんな立て札が立っています。
苦しいときは無理して笑顔にならないで。
近いうち、笑顔になれる事が待っているよ。
ずっとそばで見守っているよ コニー @whitetigerchan
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