《 四日目 》つづき

 夜の八時を過ぎていた。

 王子香織は男と二人で、二階の夫婦の寝室へと上がって行った。

 雨はすっかり上がり、満月に近い月光が広い寝室を妖しく照らしていた。昼でも夜でもないような異世界の光が二台のベッドの上に静謐に満ちていた。

「ほほーん、いい部屋だな。あんたのベッドはどっちだい」

 ホームレス須田はいつもの下卑た調子で言った。

「右のです」

 と香織は静かに答えた。

「旦那と愛し合う時はどっちのベッドでするんだ?」

「決まっているわけではありません」

「じゃあ、あんたのベッドにしよう」

 どこまでも品性下劣な男。憎んでも憎み足らぬ最低のホームレス。覚悟を決めたはずの香織であったが、今さらのように嫌悪感が募った。

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