第四話:底辺冒険者
俺の寝床はノラ街でも最低ランクの区画にある宿屋だが、ボアを仕留めた金貨が宿屋代でほとんど消えてしまう。
残った金貨で、味のしない硬いパンとトカゲの肉を買う。
疲労で腹が減った。
どんなものでも、空腹の時には旨く感じるものだ。
宿屋の主人とはすっかり顔馴染みになってしまっている。
時々、差し入れでカルミの実をもらう時もあるが、栄養が不足しがちな貧乏人にとってこの差し入れはありがたい。
風呂に入るのにも別途料金が かかるため、入るのは数日に一度と決めている。
今日は残金がほとんどないから、次の稼ぎでどうにかするか。
寝床といっても、板が張られた仕切りに藁が敷き詰められ、そこに質素な布が敷いてあるだけだ。
服も二着しかないから、毎日冷たい水で手洗いしては狭い部屋に干しておくだけ。
最低ランクの生活だが、贅沢は言えない。
モンスターに出くわす危険性のある野宿と比べてはるかにマシだから。
はあ。
横になり、目を瞑る。
ため息が静寂に包まれた闇の空気を揺らす。
こんな生活がいつまで続くのか。
単独で狩場に出掛け、狩るのはボアぐらい。
ボアが狩れない日は野草を売り、生活の足しにしている。
かつて憧れた未知の世界での暮らしは、ここまで過酷なものだったろうか。
確かにオンラインゲームにあるようなファンタジーの世界では、想像力がある限り、考えられることは大抵出来た。
魔法が使え、空を飛べ、特殊な能力が使えた。
でも、今の俺にあるのは、古く錆びた剣とボロボロの装備。駆け出しの冒険者でも無いような悲惨な装備だ。
お手上げだよ。
戦場に裸で駆り出した状況と言っても間違いではないかもしれない。
上体を起こし、壁に立て掛けてある剣を握る。
刃が大分傷んでいる。
出来る限り研いたものの、今回は修理が半端だ。
後程、鍛冶屋に持っていくしかないな。
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