第三話: 路地裏の取引

余計なところで時間を使ってしまったせいで、この店に着くのも遅れた。


俺の唯一の信頼できるやつがいる場所。


路地裏の通りを数分後歩き、入り組んだ道を何本か越えてたどり着いた場所。


初見では中々たどり着くことが難しい。


カラン。


扉を開けると、小気味良いベルの音が出迎える。


相変わらずのボロさ。


店内は古い装飾品で飾られ、店主の趣味と思われる代物がところ狭しに並んでいる。


物は多いが意外と几帳面に置かれている。


そのギャップが良かったりもするのだが。


「やあ、ラト。いらっしゃい」


こいつが店主のクレイ。


おんぼろの布を身体に巻き付け、頭には良く分からない獣の皮から作られた帽子を被っている。いまだにこいつが、男なのか、女なのか判別出来ていない。


「いつものやつだね」


ボアの肉片を受け取り、手際良く金貨を手渡す。


「まいど」


クレイは変わり者だが、商売に関しては一流だ。


取引は公正に行うし、取引上の秘密も守る。


当たり前のことだが、このノラ街ではそれが普通ではない。


クレイは裏の世界の人間だが、約束はきっちり守る。


取引相手としては非常に信頼のおける奴なのだ。


とはいえ、俺が金貨を得るために狩るのはボアぐらい。


そんな俺を相手にして奴になんのメリットがあるのか。


金づる。


この店は裏通りにあるが、客が来ない訳でもない。


変わり者。


単に興味が無いだけか。


意外性。


ボアばかり狩る若者が次にどんな獲物を仕留めてくるのか。


あまりいい趣味ではないな。


金貨をポケットにしまい、店の扉に手をかける。

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