第二十六話:人肉を食らう家畜
ノラ街には大層な塀も無いし、都市の守備兵も配置されていない。
冒険者たちの違法な賭博等を見てみぬ振りをする代わりに、軍事予算を削り防御は都市の主要な部分だけに偏っていた―
『ギャー!キャー!逃げろー!助けてくれ…。』
女の悲鳴と男の叫びがこだまする。
全長5m級の黒い塊が正面の門を軽々突破した。
ドンッ!!
爆発のような音がした。
木製の門は粉々に砕け、跡形も無い。
そいつは以前森林地帯で遭遇したボアだった。
1、2m級のボアが続く。
冒険者の殿が簡単に突破される。
ボアの突進を直接受ければ、普通の冒険者は飛ばされる。
巨大なボアに飛ばされた仲間を見ての判断だ。
俺は少し身震いした。
奴が来たのか。
そんな情報は無かった。
事前にボアの大群が襲ってくるという情報が回っていたはずだった。
だが、商人たちや住民は避難をしていなかった。
たかがボアごときに店を閉めて避難するほどでもないと油断していた。
ノラ街の住民たちの存在価値は、今この場でモンスターのエサとして、家畜としての存在にまで成り下がった。
自業自得だ。
事前の準備を怠った故に被害を受けるのは自分自身だ。
冒険者だからモンスターを狩る、人助けをするというテンプレは無い。
「助けて…。助けて…。」
逃げ遅れた住民が容易くボアに踏み潰され、血を吐き、内臓が飛び出す。
「痛い!痛い!誰か助けて…」
無惨にも蹂躙され、その肉を骨をガリガリと食べている。
隣のミラが嗚咽し、嘔吐した。
「たすけ…ないの…?」
ミラが俺にすがってくる。
助ける…か。
本来俺は誰も助けないし、助けようとも思わない。
しかし、今回はギルドからの依頼でもあるし、報酬ももらえる。
なにより、俺はボア狩のラトだ。
ボアごときに街が壊されるのは納得がいかない。
そう言えば黒幕の存在が気になる。
しかも、やはり、このボアの大群は通常のボアと違い、気性が荒い。
人間の肉を食うか…。
「ミラ、付いてこい!」
俺は剣を抜き飛び出す。
ブギャアーッ!
1m級のボアのあたまを叩っ切る。
籠手に返り血を浴びる。
俺の相手はこの雑魚じゃない。
巨体な最悪な塊に向かって走り出した。
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