第二十二話:殺意の先

《殺してやる。殺してやる。殺してやる―》


殺意に脳内が縛り付けられる。


どうしようもない怒り、焦燥、苛立ちの感情。


頭が痛い。


目の奥も痛む。


足の皮は無惨にも剥け、血は固まり黒ずんでいる。


唇を無意識に噛んでいた。


鉄の味がする。


目やには石のように黒く固まっている。


目の下のクマが見苦しい。


視点は定まらない。


前に付いている眼球がどこを向いているのか分からない。


ただ、殺意というものが一人歩きしている。


殺意の固まり。殺意の代名詞。


俺が、私が、殺意が正義だ。


発狂。


グォー、ブッブッ、グゥー。


奇妙な笑い声をあげる。


家畜の中で育った人間が人間であるはずがない。


糞尿と人間の傲慢に腐った固まりが右手にすり寄ってくる。


ニヤッ。


黒い固まりを従えた憎しみと殺意のそれは、不気味な笑みを浮かべ、獲物を見るような目で、ノラ街を俯瞰していた。

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