第十八話:独りではなかったから
俺はシケラを片手に徐に立ち上がった。
酒に強い方だが、今日は雰囲気に酔っている。
あまり実感は無いが、気分が高揚している。
俺が立ち上がろうが周囲は気にしない。
ジェイも陽気にバンダナ野郎に唾を飛ばしながら語りかけている。
バンダナ野郎は身を引いて迷惑そうに見える。
席の端にスペースがあった。
自然な感じで入っていく。
少女がこちらを一瞥する。
興味は無いようだ。
カセスオレをちびちび飲んでいる。
席に深く腰掛ける。
シケラの追加をオキさんに頼んだ。
深く息を吐く。
気まずい感じではない…と思う。
「…よう、飲んでるか?」
コクッ。
少女が頷く。
話は聞いているようだ。
「…どうして、あの時いけると思ったんだ?」
今度は首を傾げる。
話の合点がいってないようだ。
「どうして、あの時急に飛び出せたんだ…?」
言葉を変える。
今度は意図を理解したようだ。
「独りじゃなかったから」
ミラは確かにそう言った。
自然と笑みがこぼれた。
気付かれまいと思わずシケラを一気飲みする。
ふん、馬鹿馬鹿しい。
ガンッ。
乱暴にグラスを置いて店の出口まで向かう。
誰も俺のことなんか気にしやしない。
ジェイが何か言ったようだが、全く聞こえなかった。
ミラは追い掛けて来なかった。
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