第十七話:ノラ街の居酒屋

ノラ街の一角に冒険者御用達の居酒屋通りがある。


普段はカウンターで軽くシケラを飲むぐらいで、オーナーのオキさんとその日の収穫について語って、適当に一人で飲みに来ている女を構っていたりした。


オキさんは酒について詳しく、いつもカウンターで一人飲んでいる私のところに来ては、オススメの酒についてレクチャーしている。


「どうだ?」


ジェイが乾杯の後、少しして陽気に話し掛けてくる。


白い歯を見せ、顔が赤みを帯びている。


酒に弱い癖によく飲む奴だ。


オキさんの店に飲みに来ている点はいつもと変わらないが、今日は団体冒険者用の席に座っている。


若干ヴィップなのはこいつがいるからだ。


「新鮮な感じだったんじゃないか?」


シケラを片手にガハハと笑いながら、私の背中を力加減無しに叩いてくる。


細い体躯であれば骨が折れるんじゃないかというぐらい馬鹿力だ。


「…」


シケラをすすりながら、適当に相槌を打つ。


フッ。


鼻で笑われるが悪い気はしない。


オキさんとのカウンターでの反省会はそれはそれで有意義なものであった。


単体冒険者にとってみれば、少なからずよき相談相手だった。


ふとカウンターに目をやれば、オキさんが忙しなく動いている。


ジェイ等とともに、店にやってきた時は一瞬驚いた様子だったが、すぐにいつもの人が良いオキさんの表情に戻った。


新鮮な感じか。


確かに変化があったという点で収穫はあった。


どこか寂しげな居酒屋に違った時間が流れていた。


酒と薄汚れた血生臭さに天井を仰いで浸り、端の方に座って俯いている一人の少女に目をやる。

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