第十五話:自答

剣を交えると、交えた相手の呼吸から何を考えているのかが鉄の振動から神経に伝わってくる。


正確に言えば、交わる以前に相手の目線、表情、背景、空気、温度感などから、大体を感じとる。


どのような挙動で攻めてくるのか。


間合いを詰めてくるのか。


正攻法なぞは無いが、理屈とかでもなく、対人であれば予想可能な範囲が常に存在するとは限らない。


奇跡やら偶然やら言われる事象が予期せず起こることもしばしばある。


《下を向くんじゃないよ。あんたは自信を持って自分の剣を振るいな》


腕に力が入らずとも、息が切れて苦しくとも、何度でも立ち上がり向かっていく。


ダサいけど、諦めて膝をつくよりはまだ希望がある。


以前にどこかで誰かに言われた気がする。


微かな記憶。


定かではない思い。


ミラが敵の不意を突いている。


魔法使いは一瞬たじろいだものの、すぐに態勢を立て直し、ミラとの距離をとる。


遠距離からの魔法攻撃だ。


近接戦には向いてない。


バンダナ野郎に一泡吹かせれば一気にこちら側の勝利は確実なものとなる。


剣を握る手に無意識に力が込もる。

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