第十四話:芽生えの時

「考えがある」


フードはそう言った。


考えがあるって、どうすんだよ一体。


「おいフード、考えってなんな…」


「ミラ」


…?


「ミラ。私の名前」


「フードじゃない。ミラ」


フードの下から覗かれた目はそう強く語った。


ああ、分かった、分かった。ミラさんね。


「…それで、どうすんだよ、ミラ」


ザッ!


俺の答えに応じるよりも速く、グレートソードの元に飛び出した。


おいっ、考えがあるって言ったよな!?


何そんな勢いよく突っ込んで…。


「付いてきて!」


何かに勢い良く吸い寄せられるように駆け出したミラは、後ろを振り向くことなく、大声でそう呼び掛ける。


たくっ、なんだってんだよ…。


俺は慌てて追いかけたために一瞬転びそうになるが、なんとか態勢を立て直しミラの後を追う。


正面から突っ込んでんじゃねえのか!?


ミラの後ろ姿を追う。


その俊敏な何かはまずグレートソードのところまで近付く。


相変わらずボロボロな大剣野郎の陰に身を隠しながら、確実に敵の近くまで接近する。


グレートソードに気を取られていた敵は状況を把握できていないようだ。


咄嗟に回避行動を取る狂気女はミラの攻撃を避けられない。


それは正に流れるような出来事だった。


確実に一刺しでまずは一体撃破。


次に、火系統の魔法を操る子供の元に突っ込む。


それは無謀ではなく、意図的にそのタイミングしかない瞬間を捉えて。


誰かが俺の前で戦う姿を見て、純粋に痺れた。

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