第十三話:ちぐはぐ
連携も糞も無い。
建物の陰に身を隠す。
各々が勝手に攻撃を繰返すだけだが、敵は上手く攻撃を合わせてくる。
対して、こちら側はというと、一人勝手にグレートソードを振るいボロボロになっている男と、俺の後ろにオドオドと手を揉みながら付いてくるフード。
グレートソードは敵を引き付けているが、フードは今のところ目立った活躍は無い。
勿論、俺自身も敵の間合いに入れず苦戦している。
どうしたものか。
敵はバンダナ野郎が見た目によらず、二人に的確な指示を出している。
言葉は相変わらず暴力的だが、指示自体はしっかりしているので、他のメンバーとの連携も初見ながらも出来ている。
子どもだと甘く見ていた少年も、厄介な魔法を使ってくる。
火系統の魔法だが、火力が中々エグい。
こいつが間合いに近づくのに邪魔をする。
狂気を感じる女は第一印象通り、熊爪をこれでもかと言うぐらい振るい距離を詰めてくる。
動きが俊敏で剣で攻撃を防ぐのが精一杯だ。
「敵は連携の一つも取れてねえようだな」
バンダナ野郎が嘲り蔑むように見下してくる。
くそ、どうすればいい……。
『A3、シミュレーションシステム始動。パターン2開始します』
シルクさんの合図でステージの様相が変化する。
市街地を想定した対人戦闘か。
周囲を高層建物で囲まれているが、荒れ具合が尋常ではない。
既に攻撃を受けた街を想定したステージか。
身を隠す場所には困らなさそうだが、これはシミュレーションだ。
敵の人数も分かっている。正面から斬り込むか。
「だあああああああああああ!!!」
グレートソードが、勝手に前に飛び込んで行く。
ちょっ待っ……。
激しい爆発音とともに強風が動きを止める。
くっ。なんだ。
子どもと女が前方から攻めてきている。
開始数十秒で鉢合わせ、グレートソードと敵二人が交戦する。
早すぎる。
なぜこちらの位置がこんなにも早く分かったのか。
「鈍いやつらだな」
高層ビルの上からバンダナ野郎の声が聞こえる。
「敵はゴミのヒヨッコどもばっかだ。おめら八つ裂きにしてやれ」
くそ。序盤からひでえことしてきやがる。
そんなこんなで、俺とフードは建物の陰に身を隠し、相変わらずボロボロになりながら、グレートソードは剣を振り回している。
単なる体力馬鹿なのか。疲れることを知らないのか。
グイッ。
どうすればいい?
俺が正面からグレートソードに加勢しても、相手にとっては的が増えただけで、こちらとしてはボロボロになる人数が増える一方だ。
グイッグイッ。
どうすれば…。
「ねえ」
俺は声のした方を見た。そこにいたのはもちろんフード女だが、フードの声を耳にしたことが無かったので一瞬空耳かと思った。
俺は辺りをキョロキョロ見渡したが、最終的にフードを恐る恐る見た。
フードの下から、女は決意した眼差しで俺を見ている。
こいつ、今普通に喋ったよな…?
何か作戦でもあるのか…。
「考えがある」
フードはそう言って俺のボロ服を強く握ったのだ。
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