第九話:死の冒涜

結果的に、そのフード女とは何も無かった。


なぜ彼女があのパーティに属し、奴隷的な扱いを受けていたのか。


どうしてあの時、俺をかばう姿勢を見せたのか。


今となっては本人に質すことが叶わない。


悲しいとも感じない。


あの日、あの夜出会っただけ。


特別な感情を抱くといったことも無かった。


後に噂として聞いた限りでは、あの夜パーティのリーダーに殺されたとされる説、狩りに出掛けた翌日モンスターに深手を負わされ死んだとする説など諸説あるが、どう見ても殺されたと考えるのが妥当だろう。


一度、街であのパーティに出くわしたが、フード女がいたことなど忘れたかのように、別の奴隷をパーティに加えていた。


高笑いし、屋台の肉を貪っている。


「奴隷なんていくらでも補充は利くんだよ。」


奴らにとって、ボロはモノだった。


モノをいくら消耗しても、そこに感情移入することはない。


だが、あの女は俺をかばった。


命令に従うだけの忠実なモノが主の命に背き、何が正義かを悟った。


目は死んじゃいなかった。


ボロという一人の人間として、俺には意味付けされた。


笑ってんじゃねえ。


人が死んでんだぞ。


胸糞悪かった。


笑ってんじゃねえ。

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