第二章 フードの女
第七話:フードの女
フードの下から現れた顔は女だった。
左目から左頬にかけて刃物で切られた傷がある。か細い手足に、粗末な服。
パーティの一員というよりはまるで奴隷のような印象だ。
さっきまでの険悪な空気が微妙に変化した。
それまで地べたに這っていた奴隷が細い腕を広げ、俺をかばう素振りを見せる。
パーティの面々が苛立ちを如実に募らせるのが分かる。
「なんだ?ボロてめえ、俺様に逆らうのか?」
リーダーがフードを掴み、両目を睨み付ける。
他の奴等もじりじりと距離を詰めてくる。
女はびくびく震えながらも、その場を動こうとはしない。
目はまだ死んでない。
しかし、このままでは俺だけでなく、この女も危険だ。
なんとかしなければと思うが、奴らは手加減というものを知らないらしい。
大分身体を痛め付けられた。
まともに手足を動かせない。
もう終わった…、と正直思った。
死ぬときは死ぬし、いずれにせよ早いか遅いかで生き物が死ぬことに変わりは無い。
諦めではないが、その時を受け入れるべきなのだと思った。
だが、幸いにも最悪の事態に陥ることはなかった。
騒ぎに耐えかねた店主が近くを見回りしていた兵士に事の顛末を話していた。
駆けつけた兵士によって、騒ぎは終息し、店には俺とそのフード女が残った。
その後のことはよく覚えていない。
剣を杖代わりにし、右往左往しながら宿屋に帰ったところまでは記憶しているが。
その日は文字通り死ぬように眠った。
ひどく疲れていたんだ。
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