その日が

三角海域

第1話

曇天の日。僕は妻に連れられ病院へ向かう。

「ちゃんと先生に言うのよ」

「何を?」

「先生に言われた通りに節制しましたって。ほんとにもう。糖尿病になんかならないでよ。ただでさえ……」

終わりそうもない妻の小言を聞きながら、僕は目を閉じる。

僕は若い頃より太り、妻は若い頃より痩せた。ダイエットにはまった彼女と、酒に溺れている僕。どちらが変わってしまったと言えるだろう。

どちらもか。

視界がチカチカして、僕は目を開けた。雲の合間から差す日光が僕の目を覆う。

「ちゃんと聞いてるの?」

「……してくれ」

「なに?」

「少し静かにしてくれ」

そう言って、僕はまた目を閉じる。

妻がなにか喚いているが、気にすることはない。

<これで終わり>ただそれだけのことだ。

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その日が 三角海域 @sankakukaiiki

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