その日が
三角海域
第1話
曇天の日。僕は妻に連れられ病院へ向かう。
「ちゃんと先生に言うのよ」
「何を?」
「先生に言われた通りに節制しましたって。ほんとにもう。糖尿病になんかならないでよ。ただでさえ……」
終わりそうもない妻の小言を聞きながら、僕は目を閉じる。
僕は若い頃より太り、妻は若い頃より痩せた。ダイエットにはまった彼女と、酒に溺れている僕。どちらが変わってしまったと言えるだろう。
どちらもか。
視界がチカチカして、僕は目を開けた。雲の合間から差す日光が僕の目を覆う。
「ちゃんと聞いてるの?」
「……してくれ」
「なに?」
「少し静かにしてくれ」
そう言って、僕はまた目を閉じる。
妻がなにか喚いているが、気にすることはない。
<これで終わり>ただそれだけのことだ。
その日が 三角海域 @sankakukaiiki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
「散る」ということ/三角海域
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます