第62話 交錯する思い 2

「暮斗? なんだその呼び方は。まさかお前奴と知り合いなのか? いや、知り合いなんだな。どこで知り合った?」



「こ、この間の任務の時ヒーローの家に匿われてるって言ったじゃないですか? あの時助けてくれたのが暮斗で……」



「お前が連盟を裏切って人間を助けたのも奴の影響か。クソッ! いつもいつも他人をかき回しやがってあのクソ野郎は! あやねは奴のせいで……!」



 間は途端に激情を見せた。



 思い返すと、間は姉と知り合いだと言っていた。



 更に言うと、あの姉がわざわざ知り合い程度の者にあまねを託すはずもないのだ。



 あまねはここで一つのことへ思い至った。



 ――間さんはお姉ちゃんと仲が良かったんだ。



 そうでないと姉の死を教えてくれない。怪人連盟内で守ってくれない。



 同時に、危険な任務も殆ど与えない。



 間はあやねの言葉を胸に秘め、ある意味ずっとあやねの代わりにあまねを守っていたのだ。



 あまねはようやく間がどういう人間なのか見えてきた気がした。



 以前暮斗が言っていた通りだった。



 間は自分を気遣ってくれる、貴重な存在だったのだ。



 そう考えるとあまねは自分のしたことに胸を痛めた。



 これほど心配してくれているというのに、なにも言わず裏切り行為を働いてしまった自分が情けなく思われた。



「……間さん、ごめんなさい」



「ああ? なにがだよ」



「間さんがこんなにあたしのこと考えてくれてるのに、あたしは恩知らずなことをしちゃった。黙っていなくなって」



「馬鹿が。帰ってくりゃそれでいいんだよ。で、なにがあったんだ? どうやってあいつと知り合った?」



 間は自分のあずかり知らぬところで何が起こり、あまねがそのような行動に出たのかを聞いた。



「……さっき言った通り、暮斗はこの間ヒーローに襲われた時に助けてくれたんです。それで助けてくれたのはいいんですけど……。あいつ、あたしとお姉ちゃんがよくやってたゲームを持ってたんです。それで懐かしくなってつい仲良く……」



「あやねがよくやってたゲームというと……ああ、戦士ファイターか……」



「知ってるんですか?」



「あのゲームはあやねがやれやれとしつこい上にうるさかったからな。嫌でも覚える。あの微妙なゲーム性は今でもよくわからん。それで、その後は?」



 あまねはその後の展開を思い出していく。



 ――暮斗に裏切られたと思ったが、やはりそれでもあの時の気持ちは否定できない。



 あの時間は紛れもなく楽しかった。嘘ではない。



「……暮斗はあたしが怪人だも知っても何も言いませんでした。それどころか、殺すという以外の方法なら手を貸してくれるって言って悪は絶対許さないマンを探す手伝いもしてくれました」



「奴自身を探す手伝いだと?」



「いえ、色々あってあたしが探しているヒーローが悪は絶対許さないマンだってことを知らなかったんです。それで、アドバイスもしてくれました。お前は今の生活と復讐の道、どっちを選ぶんだって」



「ちっ、白々しい真似しやがって……」

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