第57話 真実を突く 2
「お、おう。聞いてやるよ」
「あのねあのね、このにくる途中のことなんだけどね」
「なんかあったのか?」
「なんかあったのよ! 佳奈と愛梨沙と別れてここに向かう途中にね!」
「ま、まぁ話してみろよ」
「勿論よ! ここに来る途中、あたしは近所の子供達に話しかけられたのよ。『あまねーちゃん、僕たちと遊んでよ!』ってね! 最近いいことがいっぱいあったからテンションが爆上げ祭りだったあたしは寛容な心で子供達と遊んでやることにしたのよ!」
「だから遅かったのか……」
あまねは暮斗のツッコミを無視して更に話を続ける。
「『あまねーちゃん、ベイ○レード持ってるでしょ? それで勝負してほしいんだ!』とか言うからあたしは家にあったベイ○レードを取りに帰りに走ったわ。幸い子供の頃遊んでた奴がまだあったしね」
「あれ男向けだろ? なんでお前が持ってんだよ」
「昔からお人形遊びとかそういうのよりそっちの方が好きだったのよ。さて戻ってきたあたしは意気揚々とベイを構えたわ。子供たちによると、負けた奴はなんでも一つ言うことを聞かなくちゃいけないルールだそうだわ。まぁ何人もいたし、あたしがピンポイントで負けるわけないと思ってベイを構えたの……」
「……もうだいたいオチはわかったから言わなくていい」
「言うわよ! なんとあのクソガキ共、真ん中に金属が入ってるような奴で挑んできたのよ! 罠だったの! あたしが最新式を持ってるわけがないって考えて、旧型で挑ませて負けさせるってね!」
「まぁわかってたけど……アホかお前は! 相手は最近の子供だぞ! お前が持ってるような旧型で対戦挑んでくるわけがないだろうが! 少し考えりゃわかるだろ。ああいうのは何年かに一回帰ってきてまたブームになるんだよ!」
「うるさいわね! ともかく、あたしのドライブドラグーンドライあまねカスタムは見事に惨敗したわ。くうぅ、あの時のガキ共のニヤケ顔が今でも目に浮かぶわ……! なにが『な? あまねは馬鹿だから引っかかるっていっただろ?』よ!」
あまねの言う子供たちの顔が暮斗には手に取るようにわかった。
――馬鹿だから罠にかけやすいのだ。
「そしたらあいつらなんて命令してきたと思う? 服脱げとか言ってきたのよ! 服脱げって! あのエロガキ共、ちょっと人が下手に出てあげたらいい気になって。腹立ったから全員一発殴ってから思いつく限りのプロレス技をかけてやったわ」
「キッチリ仕返ししてるじゃねーか! 今の話のどこに泣く要素がある⁉︎」
「ここからよ! 勝利したあたしは主犯格の関節をキメながら高笑いしてたの。勝利の美酒をゴクゴク飲んでたのよ。と、その時――」
「その時?」
「――おまわりが来てあたしのこと怒鳴ったのよ。『子供相手になにしてるんだ!』って」
あまねは拳を握り、さぞ悔しそうに顔を歪める。
「あぁ……それで怖くて半泣きでここまできたのか……」
「怖いに決まってんでしょ! おまわりよ! 警察よ! アレに逆らえる奴なんてこの世にいないんだから!」
「怪人連盟にいた奴が言える台詞じゃねーな……」
顔を真っ青にするあまねについツッコんだ。恐らく誰が聞いても同じことを言うだろう。
あまねはぷいっと膨れると、その怒りを紛らわせるようにゲームのセッティングを始めた。
嫌なことはさっさと忘れてしまいたいのだろう。
だが、暮斗にとっての『嫌なこと』はまだ終わってはいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます