第58話 真実を突く 3

 ――話さなければ。話さなければ。話さなければ。



 話さなければいけないという強制力が頭の中で蠢く。



 楽しい時間が始まってしまえばもう話すことは困難だろう。いや、それ以前にその時間を楽しむことすら出来ないだろう。



 この問題は暮斗の中でも根幹となる部分なのだ。その部分がつっかえてしまっては生きることすら息苦しい。



 ――今、話すんだ。



「……あまね、ちょっと真面目な話していいか?」



 いつにない生真面目なトーンで話しかけられたあまねはぽかんと口を開けた。



「? いいわよ。なんの話?」



 存外軽い気持ちで乗ってきたあまねだったが、果たしてこの話を受け入れてもらえるかどうか。



 暮斗はここ数年で一番レベルに怯えた。



「………………本当に真面目な話だ。お前はちゃんと自分のことを選択した。今度は俺の番だ」



「……つまり?」



「……あまね同様、俺もお前に見放される可能性があるってことだ」



「そんなに重要なことなの?」



「……ああ。お前の姉に関わることだ」



 ――その言葉を聞いた瞬間、あまねはコントローラーを床に落とした。



 目を見開き、頭が真っ白になっているように見えた。



「お姉ちゃん……の?」



 そしてあまねは暮斗に詰め寄り、服の袖を掴んで力任せに引っ張る。



「お姉ちゃんのなにを知ってるの⁉︎ ねぇ、教えて!」



「………………俺の序列、覚えてるか?」



 突如序列の話を始めた暮斗に、あまねは頭にクエッションマークを浮かべたが、暮斗の浮かない顔から話に関係のあることだと推測したのか、考え始めた。



「えっと、詳しい数字は覚えてないけど六万とちょっとでしょ?」



「……半分正解だ」



「半分? どういうことよ」



「……六万位の方は俺の片方・・の序列だ。俺はもう一つヒーローとしての名義を持ってるんだよ」



「……二つ? なによそれ」



「…………一つは御門暮斗として登録している六万位のハグレとしての俺。そしてもう一つは……名前を隠してヒーローをしていたもう一つの名義だ」



「……そのヒーローネームは?」



 ――暮斗は一呼吸置き、その言葉を放った。




「――ヒーロー序列一位、悪は絶対許さないマンだ」




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