第20話 マイティ・ガイ 1
「マイティ・ガイってどんなヒーローなの?」
あまねは道中、自身があまり知らないヒーロー、マイティ・ガイについて尋ねた。『強い男』などというあまりに安直な名前だが、ヒーロー五位というあまりに高位な序列を聞いてたまげたものだった。
ヒーローの数は現在二十万ほどである。そのうち約十五万は予備の人員であり、サポートを主としている。
といっても戦闘に参加するわけでもなく、有事の際の簡単な指揮権を持っていたり、警察機関に入るためのステップといった形式的な側面が強い。
そのため、ヒーローになるためのライセンスを取得する際に戦闘員になるか非戦闘員になるかを選択させられるのだ。
そんな者が多い中五万人いる戦闘員は、本来の意味でのヒーローと呼ばれる。
序列が下位の者には量産型の武器が渡され、高位になればイビルのような、レゾナンスに対応した武器とレゾナンスを封じ込めたレゾナイデアを得ることが出来る。
レゾナンスはその者に適合する、ただ一つの才能のようなもので、それを変えることは出来ない。
イビル・スレイヤーならばレゾナンスを実体化エネルギーに変え、破壊力や殲滅力を上昇させるスレイアップ、暮斗ならば逃走に全エネルギーを注ぎ込むディア・エスケープといった、一人にたったひとつだけの性質を持っているのだ。
よって戦闘に不向きなレゾナンスは自然と淘汰されていき、戦闘向きかつ強力なものが序列の階段を駆け上っていくことになる。
逃走に全能力を回すしか能がないディア・エスケープを持つ暮斗が六万位で、殲滅力を強化するという単純な火力強化能力を持つイビルの序列が高位だというのはごく自然なことなのだ。
もっとも暮斗の順位の低さには、はぐれ者だという別のファクターもあるが。
そんな中で、マイティ・ガイは序列が五位だというのだ。
どのような者か、想像すらできない。
マイティ・ガイがどんなヒーローなのかというあまねの問いに、暮斗は一瞬難しそうな顔をした。知り合いのことを説明するのに何故そのような顔をするのかがあまねには分からなかった。
「なんでそんな顔すんのよ」
「いや……あいつを説明するのに上手い言葉が見つからなくてな……。なんつーか、とりあえず変な奴だよ」
「変な奴……」
あまねはそう聞いて、会う前から早速不安になった。ハグレなどやっている、一応変人にカテゴライズされそうな暮斗がそう言うのである。とんでもなく変人なのだろう。
「会いたくなくなってきたわ」
「まぁ変な奴なのは確かだけど悪い奴じゃないから安心しろ。メディアへの露出もたまにあるし、ある程度の常識はあるから」
「ふーん……。というか、六万位の癖によくそんな偉いのと知り合えたわね。お金でも包んだの?」
「お前は俺のことをなんだと思ってんだ……。普通に知り合っただけだよ」
「変人仲間として?」
「ちげーよ! ちょっと昔世話になったんだよ! 色々気にかけてくれる……まぁ、言うなれば保護者みたいなもんだ」
兄貴分だという暮斗の言葉を聞いて、ようやくしっくりきた。
そのような関係性ならば、何かの要因で目をかけてもらえるというのも不思議ではない。
かくいうあまねも、詳しくは知らないが、かなりの地位についていた姉と同僚だったらしい
一体どんな人物なのか想像出来ず、しばらく頭を悩ませていたがそうこうしているうちに暮斗がピタリと足を止めた。
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