第45話(最終回)「その日の為に、これからもまた……」~ストーリー構想など~

玲也はついに勝った。ギリギリの状況であったが1対1の対決で玲也は超えるべき父から勝利をもぎ取ったのだ。だが玲也は勝利の実感がわかずしばらく呆然としていた。ニア達からの呼びかけにも反応がないほどだ。だが秀斗が玲也の手を取り「とうとうお前に負けた」と素直に息子の成長を認める言葉が送られた時に彼は我を取り戻し、ついに悲願を成し遂げることが出来たのだと涙を流した。


・しかし、玲也は勝利したは勝利したとしても本当に僅差だった事。プレイヤーとして自分が必死に戦ってようやく僅差で勝ちをもぎ取ることが出来た事で思う所はあった。アンドリューやゼルガ達と腕を競って成長したと思っても、立ちはだかる父の壁はギリギリのところで乗り越えられたようなもので、あと少しで逆に負けていたかもしれないと感じた。そして玲也は自分がこの戦いの中で一回りも二回りも大きくなっても、父が偉大に感じられるのは、自分から離れていた間に父もまたこの電次元で一回りも二回りも成長していたのではないかと息子として感じていた。


・秀斗は自分に勝ってもそこまで喜んでいない玲也の様子を案じて問うと、玲也は確かに倒産を乗り越えることが出来た気がするが、それはあくまでゲーマーとしてであり、父さんは電次元にいた間に自分が想像していたよりもはるかに偉大な存在になっていたのだと……今度はゲーマーだけでなく人として自分は父さんを乗り越えていけるようになりたい。その為に玲也はゲノムにとどまってもっと電次元界の世界をこの目で見たいと思うようになっていたのだ。それにニア、エクス、リンの3人がハドロイドではなく自分と同じ人間の姿で出会ったばかりであり、今度は同じ人間としてもっと彼女たちの事を知りたいとの今の気持ちも打ち明ける。正直まだそこまで成長できていないからそういう話はまだよくわかっていないかもしれない。しかし自分がここまでくるまでに間違いなくニア、エクス、リンの3人が傍にいてくれたのは確かであり、自分はこの3人が大切な相手でもあり好きだと告白する。ちなみにシャルから僕はどうなのか?と聞かれると、シャルももちろん大事だし好きな相手だと付け加えた。


・だから秀斗はもしかしたら自分と一緒に母さんの元へ帰りたいと思っていたかもしたら、父さんの期待に添えなくて申し訳ないと謝る。すると秀斗は「いつのまにそんな立派なことをいうようになったな」と大笑いした。お前もお前でもうそういう年頃になったのなら別に構わない、私を乗り越えるためにしっかり頑張ってみろと激励のメッセージを送った。母さんの事なら今まで留守にしていた分私が地球に戻ると、そこで日常に戻りながらゲーマーとして極めることと別に、太陽系と電次元の友好について取り組むつもりだった。そんな折エスニックはゼルガと相談して、新たに電次元の8惑星と太陽系での友好を構築したいとのプランを発表し、その為に過去七大将軍に支配されていた惑星たちへも復興支援するとともに、ゲノムをはじめとする惑星との交流を進めたいとの事だった。その為の調査隊長に玲也を抜擢したいとの考えが二人にはあった。玲也はこの電次元の惑星たちを見聞してくる仕事を快諾する。最もその任務はまだ情勢が不安定なので1人での潜入調査が望ましいとの事らしい。そして7惑星を巡行することが結構長い旅になるかもしれないとの事で、ニア達とも長い別れになるという。玲也は割かし本気で寂しい感情を抱いていたが、それもまた自分が成長するための試練だと捉えて調査隊長としての仕事を引き受けるのに変わりはなかった。


・それから調査隊員としての訓練を1週間ほど行う為玲也はパーフェクト・ドラグーンから離れていたが、その訓練を終えた翌日にいよいよ専用のシャトルに乗り込んで玲也は調査に出発しようとしていた。見送りに来た電装マシン戦隊の面々はその調査チームを管轄する復興支援のプロジェクトへほぼ配属されることとなり、エスニック将軍とブレーン博士は体に気を付けながら新天地で頑張ってほしいとエールを受け、アンドリューからは本当人間限界がねぇって事をおめぇを見てるとよくわかると軽口をたたかれながらも、胸を張って堂々と頑張ってこい。俺はおめぇのような弟子が持てて本当によかったぜと感謝される。そしてリタからはお互い新しい自分を模索していく者同士部署は違うが共に頑張っていきたい。それと今までお前に対して辛く当たっていた事もあったとポーの件を謝られる。だが玲也は正直もっと根に持たれてもおかしくないと思っていたと返し、自分を許してくれただけでも本当にあの時は助かった。今度会うときはお互い新鮮な気持ちで会いましょうと約束した。ちなみに才人は思いっきり玲也と別れることに泣いており、イチから宥められる程だった。玲也へ俺とはずっと友達だよな!?と何度も聞かれ、彼は少し呆れながらも確かにそうだと何度も言って慰めようとしていたらしい。彼をフォローするイチは玲也へ姉さんたちをよろしくお願いしますというと、それは言っちゃダメだろと才人から逆に口を塞がれる。玲也は今一つよくわからないが、今日地球に帰る予定だった秀斗が玲也の元で「あの子の中でお前は誰が好みなんだ?」と厳格な父とは思えない意外なことを聞いいてきたので、父へ何を言っているのかと思わず突っ込む。するとまぁこれからいろいろ大変だと思うが息子よ、頑張れと笑いながら手を振る。


・かくしてシャトルは発進した。ニア達が見送らない事についてやはり自分との別れがつらい事なのかと思いつつ、調査に必要な荷物が異様に多いことをいまさらになって気づいた。そして打ち上げのショックで荷物が揺れた途端にそこから悲鳴が聞こえたので玲也はまさか……となって荷造りを解いてみれば……ニア、エクス、リン、シャルの4人が共に潜入していた。何やってんだと思わず突っ込む玲也だが、あたし達だってあれから訓練を受けてライセンスもらってるんだからとニアは反論し、エクスが玲也様なしの生活だなんてこの先考えられませんから!と早速アプローチしてくるのでニア、シャルとやはり喧嘩になる。この3人の喧嘩を止めながらリンは玲也に内緒でこんなことをしてごめんなさいと謝りつつ、やはりみんな玲也さんの事が大切で好きなんです。とこれからももっと互いを知りたい気持ちがみんなあったからこの行動に移ったとの事。この様子にお前らは……と玲也は何時ものように呆れつつも次第に笑うようになっていた。もしかしたら彼が今心から大笑いしているのかもしれないと……。


・なお、この4人のライセンス絡みを手配したのはユカだった。まさかお前がここまで積極的でやり手なことをゼルガは少し驚きながらも、シャル達皆さんの様子からやはり玲也さんと一緒にいさせてあげたいと思うのですと、彼女はゼルガの膝の元で猫を被るように甘える。この様子にゼルガは苦笑しながらユカの頭を撫で、飛び立った玲也達に想いを馳せるように窓の景色を眺める。私は君のような好敵手と出会えて本当によかった。私も情勢が収まれば秀斗や玲也のようなゲーマーとしての道を歩んでみたいと思いながら……


・そしてシャトルが最初の惑星スコルピオンへ向かっていた頃、ニアは玲也に対して少し優しく甘えるようになったような気がしていた……最も彼女が同行しようと決意したのはマリアからあの玲也は絶対お前の良い相手になる、愛は奪い取る者といった妙な後押しがあった事によるもので、彼女の為だけでなく実際自分もその気持ちは割かしあるのだからと試そうとしていたがぎこちなさはやはりあったらしい。それと別にエクスがやはり玲也へのアプローチでは何枚も上手で、新しいファルコ家の当主として婿として迎えさせても良いともう将来を約束している様子であった。これで二人が相変わらずぶつかる所でリンは玲也さんを困らせてはいけないと仲裁するも、自分がエージェントとして玲也さんを守らないといけないのですからとの発言は新たな争奪戦の火ぶたを切るものであった。ちなみにシャルは同じゲーマーとして、プレイヤーとして、調査メンバーとしてずっと一緒にいたいとの事。彼女らとこれからも一緒の事に玲也はまた振り回されるだろうと思いながらも、スコルピオンに向けて新たに決意を燃やしていた。


「――待っててくれ、父さん、今度は一人の人間として貴方に追いついて追い越せるように俺は頑張りたい。だからその日の為に俺は、俺たちは今日も、明日も、そしてこれからも……!!」

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