第44話「この日の為に、父さんに追いつき追い越せと」~ストーリー構想など~

・バグロイヤーとの戦いが終わった翌朝。ドラグーン・フォートレスの個室から目覚めた玲也は日課であるジョギングを始めていた。ゲーマーとして父を超えるその日の為に何年も続けてきた基礎体力トレーニングだが、そのジョギングへ秀斗も出かける所だった。親子同士でジョギングする事も何年以来だろうかと玲也は思う。秀斗は「早くなったな」と息子の成長を褒めてもらえるのが玲也にとっては物凄く嬉しかった。しかしその感情を抑えながら、自分が一人前になったかどうかは、今日、父さんとの決闘で決めてほしいと改めて釘を刺すと、秀斗は言うまでもないとの簡潔に述べた。


・昨日にことは遡る。戦いが終わったことでハードウェーザーの面々はハドロイドとしての役目を終え、元の体へと戻る事になった。彼の目の前でニア、エクス、リンの3人が自分たちと同じ人間の姿に戻って玲也の前に現れた。3人とも特に大差がないはずだが、玲也は彼女たちに対して前より暖かく優しくなったような気がすると評する。これにリンは恥ずかしがって照れており、ニアも少し照れながら相変わらずツンデレっぽい様子で一応嬉しいと述べようとするが……エクスがやはり熱烈なアプローチを仕掛けてくることに変わりはなかった。そしてユカもイチも無事元の姿に戻っていた訳だが、リタが現れる――ウィンは彼女の体を借りて人としてこれから生きていくことを選んだのだ。彼女がリタっぽいキャラを無理して真似ていたが、アンドリューは別にリタへそこまで気遣う必要はねぇと彼女へ優しくフォローする。ウィン・スワンはもういないと彼女はハドロイドとしての自分の体を処分していた。これはポーへの手向けの意味もあり、ウィン・スワンとしての名前と姿に別れを告げていた。


・むろん世界各国のハドロイド達も人間として戻る目途が立っていた。ハドロイドらハードウェーザーの戦いは終わり、今度こそ太陽系と電次元の友好的な交流を始めなければならないとの事で、ドラグーン・フォートレスは再度次元跳躍装置がマリアによって取り付けられていた。最もバグロイヤーが去ってからゲノムがまだ復興の途中との事もあり電装マシン戦隊はゲノム解放軍と共同で復興支援の為にとどまる話も出ていた。これに才人もゲノムへ残るつもりだったという。もう地球で自分を縛るものがない事もあるし、姉のようにちょっとこのゲノムで自分にしかできない事を探してみたいと新しい希望を見出していたのだ。地球へ帰るかゲノムにとどまるか――もし自分が父と共に帰ることになればニア達との別れがあり、本来の父を探して帰ることに関して複雑な心境を抱いていた。その折秀斗は玲也へお前は私を連れて地球へ帰るためにここまで戦い抜いたのではないだろう?と確かめられ、これに玲也は改めて自分がここまで来た目的へ向き合う。全ては幼い頃にかわした父を超える一流のゲーマーになる約束を実現するため。その為にプレイヤーとして父を取り戻すまでここまで戦ってきたが、本来のゲーマーとしての戦いはここからが正念場だったのだ。そして秀斗は私もハードウェーザー計画に参加しており、このオンラインゲームのデザインも担当していた。その中で自分もまたプレイヤーとしてゲーマストというハードウェーザーのデータを組んで、いわゆるシークレットボスとして君臨してきたとの事。ただ秀斗曰くこのデータと戦ったプレイヤーは何故か今までいなかったとの事らしい。本来なら自分も戦いたかったがこのデータを操縦できるプレイヤーが自分しかいなく、ハドロイドに記録するにはあまりにも複雑すぎた。自分が計画の為動けない関係からこのゲームデータでしか戦わせることが出来ないという。そこで実質最強のプレイヤーとして上り詰めた息子に対して、このデータを相手に戦ってみないかと誘う。これが玲也にとってとうとう決闘の場が来たのだと確信して受けて立つことを決意。その対決は明日の朝となった。


・その前日玲也は新たな戦いの為に機体データを調整していた。シミュレーターで行われる対決だが、今回プレイヤーだけによってハードウェーザーが動かされる謂わばオンラインゲームの頃と同じ仕様での対決……つまりもうニア達と組んでの戦いではない。1対1の譲れない親子、男同士の対決だ。リンはこの戦いばかりは自分たちが力になれなくて申し訳ないと謝るのだが、玲也は今までお前たちに支えてもらってここまで来たから気にしないでほしい、それとこの1対1での戦いは何時かはやらなければならなかったと、改めて今までの戦いで学んだことをこの一戦に注がないといけない心構えだった。


・エクスは玲也様にとって今までの夢が叶おうとしているのだと心から喜ぶわけで、玲也は自分が父のようなゲーマーを目指すようになったきっかけは、まだ幼い頃父は花形ゲーマーとして名を知られていただけでなく、子供たちにゲームの腕をよく教えていた。自分の父が人気者であることに幼い頃の自分として誇れる父と思ったが、同時に父のような子供たちから憧れられるような人間にもなりたいと思うようになっていた。最も自分が成長するにつれて秀斗はいわばゲームばかりやってまともに働いていない人間といわれるようになり、玲也はやがてそのような父を寧ろ恥ずかしく思うようになり、一度母さんが働いているばかりではなくたまには父にも働いてくれと頼んだこともあった。だが秀斗はお前が私のようなゲーマーになりたいと憧れたことは嘘だったのかと窘める。お前が自分にゲーマーをやめろというのは、お前が私が一流のゲーマーとして極めんがために人生を捧げていることを理解していない、またお前が世間の目を気にしてしまう軟弱ものだから言えることだと窘めたという。世間がどういおうとも私は私が信じた道をまっしぐらに進む、それは母さんだって同じことをして今まで生きている。お前も自分が信じた道をまっしぐらに進む人間になってみろ、話はそれからだと……その矢先に秀斗はゲノムへの使節に抜擢されたという。これに秀斗は外の世界に目を向けてゲーマーとしての腕を磨くこと、またゲームを通して新たな見聞が得られるのではないかとも感じていたのだ。そして父との別れを惜しむその頃の玲也に対して、私が戻ってくるまで立派な人間になれ、同じゲーマーとしての道を選ぶなら自分を超えるような男になってみろと言い残したという。


・その矢先に秀斗ら使節が行方不明になったとの報せを聞いたとき、玲也は思いっきり泣き崩れて、そして父は絶対にどこかで生きている、父と交わした約束をまだ果たしていない……その時父が交わした“ゲーマーとしての道を選ぶなら自分を超えるような男になってみろ”との言葉を受けて、その日から秀斗と同じゲーマーとして己を極めることをはじめ、それがお前たちまでに出会うまでの自分を形成していたという……この話にエクスはやはり号泣していた。そして俺はこの勝負にゲーマーとして、プレイヤーとして、一人の男としてすべてを賭けるつもりだが、一抹の不安もやはりあるという。だがニアはあんた今までの戦いが逸れ言ったらどうなるのと窘める。それは今までのあんたを信じなさいとの意味でもあった。ニアは相変わらず元の人間になっても変わりはないと思いつつも、今は彼女のその言葉が頼もしいものに聞こえた。


・そして決戦当日。1対1の決闘との事もあり玲也はブレストを選んだ。立ちはだかるゲーマストに対してブレストは速射型ニードルマイトで牽制しながら前進する。これにゲーマストは目の前でハイキックをお見舞い。打ち出されるニードルをワイルド・シャークで蹴り落とす光景を目の前にして玲也は流石父さんだと驚きと称賛を感じたが。ゲーマストはワイルド・クラッシャーによる膝蹴りをお見舞いし、これにブレストもカウンター・ジャベリンをお見舞いして受け止め、そのままジャベリンを展開させて彼を突き上げてから、すかさずカウンター・ランサーへ合体させて切りかかるも、またカワイルド・シャークに受け止められてしまう。なかなかゲーマストに攻撃が通らない。さらにゲーマストはワイルド・フェンサーを手にしてカウンター・ジャベリンを真っ二つに割ってみせる。そのまま力の入った蹴り技をぶち込まれてよろけるブレストに対してワイルド・ショルダーキャノンを放とうとするが、目の前でブレスト・ファイターに変形して空路へ逃げ、アイブレッサーとニードルマイトで上空から牽制する。


・しかしゲーマストの上半身と下半身もまた分離して、下半身が地中へ潜行している間、上半身が浮上して迫ってきた。ワイルド・フェンサーを手にしてブレスト・ファイターのキラー・シザースを切り落とし、バイトクローで両腕を挟み込んで砕かんとすれば、両腕から電次元スパークが展開して光エネルギーが逆にクローを溶かす。そして上ががら空きだとワイルド・ショルダーキャノンをぶちかまされてブレスト・ファイターは墜落。さらにその先で下半身が変形したドリル戦車が地中から出現して、ブレストの胸部へ追い打ちをかけるだが突き飛ばされた際にブレストは再度変形してカウンター・ガードサークルを回転させてワイルド・クラッシャーを破損させる。そしてもう片方のクラッシャーを破損させようとすれば上空からビームライフルが放たれてカウンダー・ガードサークルが逆に損壊。アイブレッサーを射出してビームライフルを破壊するが、今度はワイルド・フェンサーを投げ飛ばしてくるとホーミング・シーカーを分離させて速射型ニードルマイトでフェンサーをハチの巣にする。けれどもゲーマストの下半身が浮上してブレストの右腕にワイルド・シャークを刺して踏み台にして浮上、再合体を果たす。今度は足だ……ブレストはカウンター・ハンマーを射出してワイルド・シャークを砕こうとするが降下しながらの蹴り技で逆にカウンター・クラッシュが破損してしまう。その勢いでもう一撃をお見舞いされようとしていたが……すかさずブレストはカウンター・ダガーを手にして盾代わりに使う。ワイルド・シャークを根元から切断する事に成功。逆にゼット・ウィッパーで足を巻き取ってジャイアントスイングの要領で振り回すも、激しい回転の中でありながらワイルド・ショルダーキャノンが火を噴きブレストの両肩へ見事直撃して、両腕が地面に落っこちてしまう。


・一方的だ……この状況でサブアームも両腕も破損して使えない状況であり、一方ゲーマストはいくつかの武装を破損させているも、全身が無事でありワイルド・ショルダーキャノンと電次元スパークが未だ健在である。秀斗は実質電次元スパークを駆使しないと立ち回るのが厳しくなってくるまで私を追い込んだことは評価しようと称賛しつつ、だが電次元スパークを使わせたら最後だと、両腕からビームサーベルを形成してブレストへ果敢に切り込んでくる。これに後退せざるを得ないブレストだったが、敢えて体制を崩し、カウンター・ダガーを両腰から射出してワイルド・ショルダーキャノンを粉砕。これに報復せんと電次元スパークによる光の刃が同時にブレストの胴体を二刀流で切りつけんとした。すぐさまブレストのカウンター・ジャベリンを射出させて右手を潰すことに成功するも、アイブレッサーはビームシールドに変形させた左腕には通用せず、再度光の刃と化した左腕に切り落とされようとしていた……!!


「まだだ……まだだよ、父さん!」


・しかしまだホーミング・シーカーが健在であり、背後からホーミングミサイルを次々と投下してノーガードだった左肩へ徹底的に攻撃を仕掛け、それだけでなくこの状態でゼット・バーストを発動。至近距離で電次元フレアーを放つことで逆にゲーマストを沈黙させようとする。それと同時に残された片方のワイルド・クラッシャーでブレストを貫かんとするも、ブレストの頭部を吹き飛ばすのが関の山で逆にブレストが倒れこんできて同時に2機が機能を停止した。これにより戦闘データをリプレイしての判定となるが……僅かに電次元フレアーの掃射によりエネルギーを使い果たしての機能を停止したのが、ゲーマストの沈黙よりも遅かった事が判明した。この勝負は玲也が秀斗を制したのだ……!

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