第22話(第1部最終回)「あぁ玲也対ゼルガ、最後の戦い」~ストーリー構想など~

今、ブレストとリキャストの対決が始まろうとしていた。事の経緯としては、ゼルガらゲノム解放軍との共闘で電装マシン戦隊とPARはバグロイヤー太陽系前線部隊を壊滅させることに成功した。だが世間から反バグロイヤーの意識は根強くゼルガが首謀者ではないかとの声も出ていた。地球と電次元側の相互理解の為にこの戦争の責任を誰かが取らなければならないと、ゼルガは自ら死を覚悟していた。これに玲也はゼルガがこの戦争を終結させた功労者であり、彼の恩に対して仇で報いる事は納得がいかないと主張し、実際電装マシン戦隊側ではゼルガは今後に必要な人物であるとの見解はほぼ同じだった。だが世間をどう納得させればよいか……ここではゼルガの生死をかけて決闘で挑んではどうかとアンドリューはエスニックへ提案する。ハードウェーザー同士の決闘でゼルガをその場で仕留めることが出来れば、戦争責任をゼルガは果たすことが出来る。最も決闘で自分たちがまけても何も無しではゲノム側が納得することはないだろうとエスニックは意見すると、アンドリューは仮にゼルガが勝てばこの太陽系の統治を彼に譲るとの条件を提示すればよいとの事。かくしてゼルガの処分をめぐってバグロイヤーを退けた電装マシン戦隊の戦争はゼルガとの決闘で全てを決する事になった。


・このアンドリューの申し出に対してゼルガは、せめてプレイヤーとして最期に一戦交えたいと承諾するが、彼に対して自分が戦うべき相手は玲也だと指名した。これにアンドリューはそう来ると思ったと余裕の構えであり、少し動揺する玲也に対してアンドリューはお前が一人前になるかどうかここで見定めたいとの事。ゼルガを乗り越えなければ父を救うことは出来ないかもしれない……そしてこの状況でゼルガと戦わなければいけないと自覚している節はあった。玲也が承諾したことでゼルガはその際の相手としてブレストをさらに指名。それは彼にとってブレストのみ一戦も交えたことがないとの事で関心があった為だ。玲也は1対1の決闘ならブレストが最適だと承諾……これにより現在とある要塞内部にてブレストとリキャストの対決が繰り広げられようとしていたのだ。


・現れたリキャストは新たにデュアル・ファイター・クロスのデータを完成させており、空中戦と近接戦に特化したリキャスト・バトラーとして玲也の前に現れた。このいきなり新兵器を持って決闘に現れることをエクスと才人は卑怯だと非難するが。ゼルガはこの決闘はお互いの戦い方を把握していないフェアな条件で行いたい、その為にはリキャストの手口は知られすぎていたとの事から、これまで温存していたバトラー形態で挑むとの事。ヴィータストやスフィンストとのコンバージョンで出撃したならば、ブレストは実質2対1で戦う事になるためフェアな決闘では許されない。だが玲也は自分も今後に備えて温存していた新兵器があるから問題ないとの事。2機が転送された時、要塞のがれきが天井から落ちた時を合図にするかのように両者の戦闘が始まった。


・まずいきなりリキャストがデストロイナイファーを片手にブレストへいきなり切り込んできた。ブレストの放ったホーミングシーカーによると遠方にもう1機のリキャストが潜んでいるとの事で、玲也は目の前のリキャストがゼット・ミラージュによる分身だと予測した。だが実体のある分身として早く倒すことに越したことはない。アイブレッサーを掃射するも分身体は回避。ならばとホーミングシーカーから放たれるホーミングミサイルが双方に向かって飛び、その1発が目の前の分身体に命中……したが、リキャストは健在。分身体と思われた目の前の彼は何と本物だったのだ。爆発を物ともせず飛び上がってブレストの頭上めがけてナイファーを突き刺さんとする。これにキラーシザースで彼を挟まんとするブレストだったが、死角からビームが彼の後頭部に直撃、これで怯んだすきを突かれてナイファーがキラーシザースを切り落とした。


・そして着地すると見せかけてリキャストは彼の目の前でターンして主翼でもある大型カッター・デストロイスライサーによりブレストの右手を切断しようとする。だが同じく追加した新武装カウンターガードサークルの刃が回転して右手を守るようにデストロイスライサーを押し返していく。だがリキャストはすぐに態勢を立て直して反対側の翼でブレストの胸部を引き裂く。コクピットに亀裂が入った事に玲也は戦慄しながらも、一瞬背を見せた隙をついて左腰に備えたカウンターダガーを手にして投げつける。投げつけたダガーがスライサーの付け根に突き刺さる。さらにすかさずガードサークルをダガーの柄に接続してヒートバンカーとしてガードサークルからの電熱をダガーの刃へ伝えながら、リキャストの片翼を溶かそうとする。だが背を見せたリキャストはサブアームによるビームサーベルを背後へ展開してヒートバンカーを駆使するブレストの右手を貫く。ヒートバンカーが機能停止に追いやられるも、ガードサークルをメリケン代わりにしようとしてリキャストを殴り飛ばそうとしたがナイファーで切り落とされてしまう。しかしこれが狙いだと玲也は切り落とされた右手に代わって新たに追加した速射型ニードルマイトを展開。一気に放たれるニードル状の弾丸にリキャストは距離を置いてビームサーベルをビームガンとして転用して防御目的で連発する。


・逃がしてなるものか――とブレストはカウンターハンマーを飛ばしてリキャストのビームサーベルに絡みつけて思いっきり持ち上げてぶん回す。なすがままに振り回されるリキャストだが地面にたたきつけられようとしていた。しかしもう片方のビームサーベルとデストロイスライサーを地面に突き刺して軸代わりにしてブレストの回転を止めようとし、さらに別方面からのビームが2機を繋ぐゼットウィッパーを切断した。死角からのビームの正体は何か……ホーミングシーカーが捉えたのはリキャストが新たに追加したサイキックビットミサイルによる遠隔攻撃だったことが判明した。これを捉えた途端ホーミングシーカーがビットミサイルと相打ちになる。回転を止める軸代わりに使ったスライサーとビームサーベル1基を損失したリキャスト。特に片翼がない状態だとリキャストは飛行することが出来ない……空を飛べるこちらが有利だ!と玲也は決着をつけることを選ぶ。ブレストがもう片方のスライサーへゼットウィッパーを巻き付けてさらにバイトクローで両肩を握りつぶすように抑え込んで地面へ押し倒す。このゼロ距離で電次元フレアーを放って止めを刺さんとしたが……リキャストが目の前で姿を消した。電次元ジャンプを駆使したのだ。まさか単なる回避目的で消耗の激しい電次元ジャンプを駆使する事は想定外だった玲也だが、彼の躊躇を待たずしてリキャストがブレストの背後を取った……!!


・この決闘は壮絶極まりないものであり、見守る電装マシン戦隊の面々も息を飲まざるを得なかった。カプリアはブレストとリキャストが同じ近接戦を得意とするが、ブレストは装甲重視、リキャストは機動性重視と異なるタイプだと評し、マーベルはこの戦いの中でリキャストの方が優勢だと分析する……そしてシャルは電次元ジャンプをあそこで普通使うものかと疑問を感じていたのだが、アンドリューは恐ろしい事をゼルガが目論んでいたと気づかされた。彼はブレストの燃費の悪さを突いているのだと。


・キラーシザース、カウンタークラッシュ、ホーミングシーカー、カウンターガードサークル……破壊されたブレストの武器は、いわばブレストの燃費の悪さを補うための携行武装でもあったとアンドリューは評する。その武装をピンポイントに破壊していくことでブレストの攻撃手段を次々と奪っていく。また電次元フレアーを撃たせるようにする為、ゼルガは敢えて翼でもあるスライサーを1つ損失させて飛べなくすることで空中からリキャストを拘束してゼロ距離で電次元フレアーをお見舞いさせれば勝てる……そのような一手を玲也に誘導させていたのだと。電次元ジャンプによるエネルギー消耗も、電次元フレアーの消費と同等のものであり、ゼルガからすればその程度のリスクは計算内、また電次元ジャンプという普段非常時でしか使わない回避手段を取った事で玲也を戸惑わせる結果に繋がっているのではないかと……アンドリューの口から語られるゼルガの戦法に周囲は慄きを感じずにはいられなかった。


・リキャストのビームサーベルがブレストの背中めがけて振り下ろされる。バイトクローで背後からのリキャストを必死に押し上げようとするブレストだが、クローがビームサーベルで切断されてしまった。そのまま背中からコクピットをめがけて突き刺さんとするビームサーベルだが、ブレストが左肩から押し出される速射型ニードルマイトを一斉に浴びせてリキャストを怯ませる。振り向いてビームサーベルを連結するサブアームをブレストが掴んで握りつぶす。さらに右手の速射型ニードルマイトがリキャストの右手をハチの巣にする。とうとう彼の右手を封じた。この報復に彼の左手からナイファーが投擲され速射型ニードルマイトに突き刺さり暴発。ブレストの右腕そのものがとうとう吹っ飛んでしまう。


・ゼルガはあまりにも強い……玲也は彼の想像を絶する戦い方に恐れを感じていた。しかしニアがすぐさま玲也へ平手を打って彼を正気に戻す。あんたは無愛想で生意気で鈍感だけども、決してあきらめることをしない強さを持っているはずじゃないの!?との言葉を受けて、この追いつめられた状況の中でも父だったら一瞬のスキを突いて打開することが出来るはずだ、父さんを追い越すならそれくらいの事はしなければだめだと玲也は冷静さを取り戻し始める。リキャストは飛行することが出来ない……なら頭上から攻めることはやはり有利だと再び飛び上がりカウンターパンチャーを仕掛けんとする。ゼットウィッパーを連結させた状態から、ゼルガはまた自分を拘束して電次元フレアーを放つのではないかと予想して、今度はウィッパーをナイファーで断ち切ることを選んだ。二回目の電次元ジャンプをリキャストはしようとしなかった……これはリキャストのエネルギーもそこまで残っていないのではないかと玲也は予測する。そしてすぐさま速射型ニードルマイトを連射して、リキャストが手放したナイファーをハチの巣にすることへ成功した。ナイファーをリキャストから失わせることに成功した……反撃の始まりだ!とブレストがカウンターパンチャーが腕に戻ったと同時にカウンターダガーをリキャストの足めがけて投げつける。脚部を損傷して動作が鈍るリキャストへ止めを刺してやる――ブレストの左手にカウンターダガーが握られるが、もう1基のビットミサイルが背中に命中。気を取られてアイブレッサーでビットミサイルを破壊するも、リキャストの左手にデストロイスライサーが握られブレストの左腕も切り落とされてしまう。両手を封じられてもなお膝から残された最後のカウンターダガーを上手くデストロイスライサーに向けて射出して真っ二つに切り裂いた。


・ブレストの燃費の悪さを突いて武器を次々と破壊して戦闘手段を失わせる戦法を取るリキャストだが、ブレストは逆にリキャストが飛べない事と武装が自分より少ないことを利用して空から同じ戦法で攻めた。この激戦の様子にゼルガはどこか心のうちから萌えさせてくれる楽しさを感じ取っていた。自分は生まれもってして一流の才能を持って生まれて王位を継承して人々から絶大な支持を得ている。自分にとって王として民を愛し守らなければいけないとの事を心から望んでいることに変わりはない。だがしかし……誰とでもフリーダムに接したいとの想いは必ずしも満たされている訳ではなかった。だが目の前で自分と激しい戦いを繰り広げている玲也が、自分と互角の勝負を繰り広げ、この激しい戦いに自分の心が燃え盛っている事を実感していた。秀斗のゲーマーとしてライバルとしのぎを削ることに熱くなる気持ちと似たものではないかと……


「素晴らしい……素晴らしいのだよ羽鳥玲也!!君こそ私にとって求めていた好敵手(とも)なのだと思うと……!!」

「俺も今、貴方との戦いにこの魂を燃やしているのは間違いない……ゼルガ、確かに俺も貴方をライバル……好敵手(とも)として認めている!だが俺は貴方を踏み越えて父さんを乗り越える運命(さだめ)だ!だから貴方に俺は勝つ……!!」

「本当に素晴らしい……だが私にまだ勝機がある!そういうことなのだよ……!!」


・この激しい戦いの中で玲也とゼルガは互いを好敵手(とも)として認め合うようとしていた。だがゼルガの言う通りリキャストには切り札が残されていたのだ。それはゼット・ミラージュで作られた彼の分身であり、彼にリキャストは本物の電次元ソニックを預けていたのだ。飛び出した分身をアイブレッサーで迎撃して破壊するブレストだが、電次元ソニックは確かにゼルガの手に渡ったのだ。温存していた電次元兵器がリキャストには残されており、電次元フレアーをぶつけてもリーチからして届きそうにない。電次元フレアーはあと1回しか撃つことが出来ないほどブレストが消耗している。どうすればよいのだろうか……!!


「ポー……力を貸して!」


・ニアの叫びから玲也は奇策に全てを賭けた。それは飛び上がった状態でリキャストに電次元ソニックを自分へ向けて放たせる事。この時ブレストは右ひざを曲げた状態でゼット・バーストを発動させて残されたエネルギーを全て使うようにして電次元ソニックを回避、そしてリキャストに向けてカウンタージャベリンの先端を展開させた膝蹴りを思いっきりぶちかましたのだ。


「電次元ソニック……私の切り札を最後まで温存していた事が私にとっての最後の一手だったが……」

「玲也さんは電次元フレアーに頼らないで……」

「私が自分の策に溺れていたということ……なのだよ!」


・最後の力を振り絞って飛び上がってリキャストから離れた場所へ着地したブレスト。燃え尽きた彼の背後で今リキャストが機能停止して爆破四散する壮絶な最期を遂げた……かくして玲也がこの決闘に勝利したことで全ては終わったように見えたが……










「羽鳥玲也、私の完敗ということ……なのだよ」

「ゼルガ……本当に強い、俺が今まで戦ってきた中で貴方が最も手強い敵だった……ありがとうございました……」


・その後玲也とゼルガはお互いの戦いに最大級の称賛を送っていた。この今までの戦いは実はシミュレーターによる模擬戦であり、全世界ではまるで実際の戦場で二人が激突しているように見せかけて中継されていたことで、ゼルガがこの決闘で玲也に敗れて散ったと思われているが、ゼルガとユカは今ドラグーン・フォートレスで確かに生きていたのだ。この戦いで敗れたゼルガだが、初めて自分が完敗したことで寧ろ今までの自分の葛藤が洗い流されたようにも感じ、玲也を好敵手(とも)として認められることに新たな希望も感じていた。最も世間ではまだ反バグロイヤーの意識が強くゼルガとユカはまだ地球側にゆるされていないかもしれない。だが二人はこれから少しでも相互理解が出来るように陰ながら努力を続け、太陽系へ避難したゲノムの民を陰ながら導いていくつもりだった。今度は好敵手としてだけでなく友として会い、共に戦いたいと玲也達と約束して二人はドラグーン・フォートレスを発った。


・太陽系での戦いに今終止符が打たれ、ゼルガとの決闘にも制した。玲也の勝利にシャルや才人たちは喜び、アンドリューはもう俺を超えたかもしれないなと彼を称賛した。だが天羽院は行方をくらましており、バグロイヤーの本部隊はゲノムに勢力を構えている。地球と電次元の相互理解を成し遂げ、父を救い乗り越えるまで戦いは終わっていない。玲也はゼルガとの激闘と友情を胸にして、決意を新たにするのであった……。


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