第20話「彷徨い、抗う、そして戦え……!!」~ストーリー構想など~

・あれから玲也は呆然としていた。天羽院だけでなく秀斗がバグロイヤーの人間であるとの事を世間に知られて、人々は玲也の家を荒らしとても外に出られる状況ではなかった。そして理央が仕事のはずが人々の罵りの声を浴びながら帰宅してきた。どうやら秀斗の関係で彼女がシナリオライターの仕事から降ろされてしまったらしいとの事で、父への悪評が母を苦しめていることに玲也の胸は痛む。だが彼女は私の事よりも玲ちゃんはやるべきことがあるのでは?といつもの様子ながら少し厳しい様子で指摘する。玲也は今自分の戦いは父を助け出すことだけではないと分かっていても、この状況では……と歯切れの悪い言葉を返し、もう少し考える時間が欲しいと自室にこもった。


・そして自室に戻った玲也は机の引きだしから父が健在だった頃のアルバムを目にして、過去を振り返る。自分にとって強く厳しくもあるが同時に人として尊敬する事の出来る父親だった。父さんを超えていけとはいつも自分に教えられていたのだが、今となっては敵味方と相対する状況で越えなければいけないのかと葛藤する彼に対して、ニアは彼を奮起させようと敢えて悪態をつくが、エクスは玲也をかばおうとしてやはり衝突する。そんなさ中才人が訪れてきた。彼が家族や親類を失った事、それだけでなく瑠衣も失った事を彼女は知っているのではないかと……玲也は彼に対して気遣おうとするも、才人は「お前、ハードウェーザーのプレイヤーだろ……?」といつもと異なるシリアスな様子で尋ねる。おそらく瑠衣が死に際に彼へ伝えたのかもしれないと玲也は察してそうだと否定しない。これに才人は「じゃあ何でお前が今ここにいるんだよ」と、彼はちょっと顔を貸せと外へ連れ出した……。


・その頃ゼルガはウィンを連れてフラディの元へ現れた。彼女をゼルガに操られた状態でそのまま手下に加えたと報告するも、そもそも予定より前倒しで襲撃を仕掛けたこととアルファに深手を負わせたことは、実質上官への反逆行為であり利敵行為にもなるとしてゼルガを見限り、反バグロイヤー派の象徴であるとして彼をギロチンで公開処刑することが決定した。


・その頃シャルはユカ達からゼルガの真意を知らされていた。玲也が考えていたことはあながち間違いではなかった点、そしてユカにとってゼルガは政略結婚で自分は国を守るために父に送り出された立場だったが、彼はユカに対して慈悲深く愛で続け本来なら属国となるはずだった自分の国に対しても対等な態度で接した。ゼルガの「誰とでもフリーダムに接したい」との想いに偽りはなく、その性格故に彼らは下々の民にも真摯に接して、地球の使節に対しても友のように接し、彼らとともに相互理解による平和を望んでいた。その「誰とでもフリーダムに接したい」彼にとってバグロイヤーの侵攻から民を守るためにやむを得ず屈したのは苦渋の選択だった。そして忠誠の証としてゼルガは太陽系方面の前線司令官として君臨せざるを得ず、その為の機体として本来バグロイヤーに立ち向かうために生み出されたハードウェーザーを使わなければならなかった。そのハドロイドとしてユカは自分の身を愛する者の力としてささげたのだと……。ユカのゼルガへの愛はシャルにも通じるものがあり、彼女は自分の両親の事を話しながらユカとの交流を深める。そして今回ハードウェーザーを拉致するゼルガの戦いは、電次元の真実を知らせることが相互理解につながると踏んでの事であり、彼はフラディらバグロイヤーの本部を欺いたうえで一大作戦を繰り広げようとしている。その為にはゼルガを救うことも必要不可欠で、ウィンは操られたふりをして今フラディの元で動いている。シャルはユカ達と協力してゼルガを解放し、一大作戦を決行せんと決意する。


・その頃才人は玲也を何発が殴り飛ばした。これに玲也は「ハードウェーザーが電次元間のマッチポンプと思っているからか、俺の父さんがバグロイヤーだからか」と玲也は半分諦めた様子で問い返すが抵抗しない。だが才人は「馬鹿野郎、お前がハードウェーザーのプレイヤーだからだ!!」と胸ぐらをつかむ。何故戦わないのかと才人は玲也へ憤っていたのだ。玲也は、お前がバグロイヤーによって家族を失った事は確かに苦しいことかもしれないが、俺は救わないといけないと誓った父さんがバグロイヤー側にいる事の衝撃が大きすぎるとの事。才人の気持ちに応えられない事を申し訳ないと思いつつも、自分の気持ちも分かってくれと弱音が混じっていた。


「お前は親父さんがまだ生きてるってことだろ!?それに帰るところだってあるんだろ!?」

「俺が幸せだと言いたいのか!?帰る所があろうとも俺は父さんを救うための戦いで今まで多くの人を殺してきた!助けられなかった敵もいた!救えなかった仲間もいた!!俺の辛さが馬鹿をやっているお前に分かってたまるか!!」


才人に対して玲也はまるで今までの苦しみを爆発させるように叫んで彼を殴り返した。そのまま彼へ馬乗りになって今まで殴られた分を、いやそれ以上の分を報復せんと殴りつけていた。ニア達は密かにその喧嘩の様子を陰から見張っていたが、才人の事情を考えず玲也が度を過ぎた報復をしていることにニアが黙っていられない。だが彼女を止めたのはリンだった。そして才人に振り上げる玲也の拳を止めた時、彼の頬を思いっきりぶったのはリンだった。


「今の玲也さんは情けないです……でも、玲也さんは本当は情けなくない、凄いはずなんですよ!!」


リンがまさか自分をぶつことなど玲也は考えていなかった。彼女は目の前で両親を殺され弟を奪われて戦いを恐れていた自分へ人々を守るために戦う勇気を与えてくれて、操られた弟を救い出してくれたのだから……多くの人がきっと玲也へ感謝している。そしてそれだけではなく玲也も自分の父をこの手で救えるはずじゃないか……と。イチが救えたように秀斗も救えばよい。この彼女の言葉に玲也は我を取り戻し始める。リンへ美味しい所を持っていかれたと自虐しながらもニアは少し苦笑する様子で、あんたは生意気で愛想がなくて、鈍感だからあたしだって腹が立つこともある、けど、真面目で諦めないから強いやつだってこともあたしは知ってるから。そんな玲也じゃなきゃあたしまで調子が狂うとの彼女なりの激励を受ける。2人に割りを食われる形になりながらもエクスは玲也様はだからカッコよくて素敵な殿方との事。


「全く……やっぱお前にはかなわねぇよ玲也」


・そして殴られっぱなしだった才人だが玲也の様子を見て怒るどころかむしろ嬉しそうに笑っていた。お前は俺と違ってやっぱり強い、ハードウェーザーのプレイヤーだけの事はやっぱりある、そんでもってニア、エクス、リンというカワイコちゃんから愛されているのはとうて俺にはできないと若干の嫉妬や諦めもあったが概ね彼に安心している様子だった。そんな仰向けに倒れる才人へ玲也は手を差し伸べて彼を起こす。「お前は俺をここまで怒らせて本気にさせた。そういう奴はなかなかいないってことをわかれ」と言いながらも彼は才人を自分の仲間だとして認めた瞬間だった。


・そして、ゼルガがギロチンによる公開処刑が行われようとしていた。だが何者かの手によりマックスとブルーナが脱出に成功し、処刑場となる宮殿の2階に飛び出してギロチンと近辺のバグロイヤー兵をめぐって銃を乱射する。この混乱にフラディはウィンへ二人を捕らえて始末するように命じ、彼女はすぐさま2階へ向かう。しかしウィンはこのタイミングを狙っており、ブルーナから託されたライフルを手にして逆にフラディを射殺。会場がこの騒ぎで騒然となる中シャルとユカが飛び出して処刑台にかけられていたゼルガを救う事に成功。この機会にバグロイヤー兵へ潜伏していたレジスタンスの有志たちが蜂起して、観客に紛れていたパッション隊と共に混乱する会場の中でゼルガ達の脱出を助けた。ゼルガは総力をもって電装マシン戦隊へ叩くとの口実で、今回の救出作戦に参加する有志たちを除いたレジスタンスや避難民達を戦力と称して既にほぼ全員を太陽系へと避難させることに成功していた。電次元の故郷を彼らに捨てさせることはつらい事だが、地球の人々と共に手を取り合いいつか奪回するとの覚悟の表れだ。あとは自分たちと救出作戦に協力する有志たちが脱出すれば一大作戦は完了する……と。


・だがアルファたち二番隊が退路で立ちはだかっていた。彼らを蹴散らしていく有志達だが、二番隊の一人が死に際にゼルガを射殺せんと凶弾を放つ。だがゼルガを庇ってマックスが倒れた。深手を負った兄へゼルガは思わず感情をあらわにして叫んだ。マックス曰く俺は戦士としての力量はあったが、王としての力量はない。お前は王として弟として俺の命に代えても守らなければならなかったと、自分にかまわず先に行けと言い残した。

がこれを察知してわが身を挺してゼルガを守った……この兄の犠牲にゼルガは彼の死を看取る間もなく涙を必死でこらえながら急ぐ。ただブルーナだけはマックスの元にとどまり続け、姉は想い人と共に生きるつもりだとベリーは悲しくも彼女の想いを察してゼルガの為に先を急がざるを得なかった。


・そして玲也は父を救うために戦う事、最悪父を超える戦いとして仕留めなければならない覚悟も背負ってドラグーン・フォートレスへ戻った。彼らの帰還にアンドリューは軽く鳩尾を殴りながら、動じない様子から「おめぇの気持ちはわかんなくもねぇが……今はその覚悟なら問題ねぇ」と笑ってみせた。彼なりの激励を受けて奮起する玲也だが、彼の元にイチがやってきた。自分も戦わせてほしいと……。そして転送銃G1に脱出しようとしているシャルから通信が入った。彼女たちが無事な様子に玲也は安心するが、シャルはイチの事を話す。自分も姉の為に力になりたい、バグロイヤーに操られていた事への贖罪をしたい……彼の強い思いを受けて、シャルは彼の本当のリハビリはハードウェーザーとして本当に正義の為に戦う事にあるのではないかと察して、エスニックの許可が下りたもとでハードウェーザー・ウェザーストからスフィンストへと大胆なカスタマイズを行ったのだ。何とか仁から自分へプレイヤーデータを書き換えたが、データの容量がヴィータストと共に少ない事もあり、最低自分の遠隔操作で動かすこともできるとの事。最も誰かサブプレイヤーが出来ればほしいとの事で、玲也は才人へその役目を託したいと頼む。これにシャルは驚きつつも玲也の頼みだからと受け入れた。才人は自分にプレイヤーとしての大役に戸惑いつつも、イチの姉を救いたいとの想いに対して、才人も家族の無念を晴らしたい事もあるけど、俺も玲也の力になれるならと……まぁカワイコちゃんがよかったと本音を少し漏らしながらも互いに手を取る。


・その折天羽院がゼルガ達の反乱を知り、サーディーへ残存勢力で太陽系へ向けての総攻撃を命じた。その間に天羽院は最後の秘策があるとの事だが……。かくして残存勢力が一斉に蜂起して各国のハードウェーザーとの戦いを繰り広げるのだが、戦局は芳しくなく、サーディーの指揮が拙い事からメガージ達はこれ以上の戦争は本当に電次元側が敗れると危惧していた。そしれ、玲也とアンドリューはシャル、そしてゼルガと合流する時は今だと決断。才人とイチもともに出撃する事になるが、ハイルドから同じ新米同士で頑張ろうと激を送られた。玲也をかばってジャックが戦死したことで、ハイルドがドラグーン・フォートレスの操舵士として立たなければならないのだ。彼の想いも無駄にしてはならないとイチだけでなく、才人もプレイヤーとしての戦いへ踏み出していく。

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