第17話 大工場メインプラント休憩室
やっぱり苦手だ、他人の体をつかうっていうのは。しかもこれ、
今回のばあい、どこへっていうのがまず
いや、こんなことぼやいたら、またピエットあたりに怒られそうだけどさ。
社長なんていっても、公社でいちばん
こないだはピエットどころか
あ。なんかちょっと泣けてきたな。
でも
そう。神さまなのだ。すごく
自分で様付けしてると頭悪そうに見える? 知らないなあそんなの。だって実際、
なにしろ
それにしてもエイジローの絡む話は、だいたいいつも面倒なことになる気がする。いつもってことはないけど、そんな印象になるくらいはいろいろあった。あいつがこの街に来て、まだ一年と少ししか経ってないのによ? 信じられる?
そもそもあいつ自身からして、封印街に世話になります、実は俺は世界の危機です、なんてやってきた大馬鹿野郎だった。剪刀騎士の紹介で捻じ込まれなければ、会っていたかどうかも……いや、会ってはいたね。
実際顔というか姿を見てみたら、さばえなすどころの騒ぎじゃない邪神というか、剣もて追われそうな大蛇っぽいというか、ものすごい代物だったわけだけど。
あいつが迷宮山師をはじめて、リコとコンビで潜り始めてからも、だいたい一年。ほんとに何やっても死なないもんだから、ずいぶんヤバそうな終幕やら
……あれ、もしかしてあいつの案件が面倒な理由ってこれかもな? ありそうだ。あとでピエットに記録を出してもらおう。覚えていたら。
にしたって、今回の件は別に
結果として出てきたのは、チャンスどころの騒ぎじゃなかったわけだけどさ。
機械部品とか珍しい嗜好品とか、そうじゃなきゃ充電式の懐中電灯と充電器でも、大箱で持って帰ってくれれば十分くらいの気持ちだったんだよ、本当に。ちなみに、バッテリー式のライトのたぐいは高く売れる。軽くて明るいし、油も使わなければ、異法師を雇う必要もない。問題は整備ができない事。街にも電力入れたいんだけど、このへんがひとつの壁になっている。発電機は確保できるとして、うちのプラントと互換性あるようなパーツとか、そういうの作れる技術者とか、なかなか流れてこないのが実情だったりする。魔王城だの超能力戦士だの、スペース戦国武将だの、物騒なやつらだけはあっちこっちにやってくるんだけどねえ。
ま、
新しい終幕が見つかって、剪刀騎士が出張ってきて、しかもそいつは堂々と、かつきっちり権力を使って、封印街にフタをしているのだ。
封印街っていうのは、文字通り迷宮の
そういうことになってる。建前上は。あくまで建前上はだ。
当たり前だけど、わざわざ死ぬために住むやつはいない。探せばいるかもしれないけど、普通はそうじゃない。普通ってのはたとえば、
剪刀騎士サマは、実際に死ねと
うん。ちょっと訂正しなきゃという話だ。
つまり、みかんちゃんに、エイジローにも、あとはリコにもかな。悪いんだけど、別に
真面目に商売してるみんなには怒られそうだけど、
無尽宮公社、
馬鹿とかお人好しとか、悪党とか、得体の知れない連中ばっかりではあるけれど。
ここは、
とか、ひとしきりぐるぐる考えて、ちょっと気合の声上げながら休憩室のマットでごろごろしていたら、ほっぺたに思いっきり痕がついていた。鏡を覗いて後悔。布団くらい出せばよかった。面倒くさがらずに。この服はまあ、シワにならないからいいとして。便利だよね未来技術。未来すぎてよく扱いに困るけどさ。
ちょうどそこで、ピエット、つまり我が秘書官どのが休憩室に顔を出した。
「
「お疲れ。どっち? 通信のほうが片付いた?」
「いえ、そちらはまだです。隧道広場の方ですね。先方が事を構えました」
「うっわぁ」
「
「
座卓に放りっぱなしのベストを羽織り直す。髪の毛を手櫛で整える。
まあ、たぶんろくでもないことになるんだし。これでいいでしょう。十分だ。
「どちらへ?」
「時間稼ぎ。念のため、替えの服は用意しといて。
「七番を抑えてあります。お気をつけて」
「さすがピエット。じゃ、行ってきます」
下につくまでに、あとは、ほっぺたの痕が取れてるといいんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます