第45話 決戦前夜

 一応は有意義な集まりだったのだろう。

 情報交換もできたし、決め事もまとまった。


 神の御業の創設者である”総裁”と”女帝”、つまり水野夫妻は現在入院中。

 ”口車のペラ”からそう聞いた。


 しば先生が今回の決戦に参加しない旨を”アッキー”こと黒田明子くろだあきこから聞いた。

 理由は邪神案件ではないため、だそうだ。


 テリー組長が今回の決戦に参加しない旨を僕は全員に伝えた。

 ガキの喧嘩に親が出てきたら恥ずかしい。よってテリー組長にはこの件を内緒にしている。


 そしてこの12人の集団の名称がついに決まった。

退魔十二楽坊たいまじゅうにがくぼう』だと。

 多数決という数の暴力。妥協の産物。

 なぜ僕の周りはこうネーミングセンスのない者ばかりなんだろうか。

 一夜限りのユニット名だとしても限度がある。


 集まりが解散した後は、軍師であるアッキーとさらに作戦を練った。

 彼女は『三段構えの戦法』なるものを僕に披露した。

「我ながら惚れ惚れするような作戦ね。どう? 私のことを見直した?」

 深夜のファミレスにて。

 あんみつを頬張りながら彼女は鼻高々だった。


 なるほど、確かに言うだけのことはあった。

 まず、スキがなくわかりやすい。

 次に、役割分担が絶妙だった。戦闘力のない”三美神さんびしん”にも見せ場があるのは驚いた。各メンバーの強い個性をよく理解しているからこそ出来た作戦。


 僕は黒田明子という女の子の恐ろしさを初めて思い知った。

 ただ単に愛想がなくネクラで腹黒いだけの女の子だとバカにしていたのだが。

 どうやら人を見る目をもっと養わなければいけないらしい。


 一段目で雑魚を全員でやっつける。

 二段目で強敵の”首斬り朝”こと山田浅右衛門やまだあさえもんを罠にかける。


「私が二段目まで考えたんだから三段目はブンゴが考えて」

「ああ、もう考えてある。だが全員の協力が必要だ。何度も指摘したように大将の”本所ほんじょてつ”には弱点というかクセがあるんだ。それを突かない手はない」

 なんこつの唐揚げを食べながら僕は力説した。

「私はそうは思わないけど。弱点を突くなら一人で勝手にどうぞ」

 アッキーは僕の提案を小馬鹿にしてそっぽを向いた。

 

 腕時計を見ると8月30日の夜中1時チョイ過ぎだった。

 今日の23時が指定した決戦の時刻。

 今になっても新火盗からの反応はなし。

 奴らの正体、そして世直しと称する振る舞いの動機についてはいくら考えてもわからないので考えるのをやめた。

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