第20話 宇宙はユーモアを好む

「ダハハハハ」

 いつも辛気臭い事務所が珍しく笑いにあふれていた。


 新しい担任からスカウトされたことをテリー組長と浦辻さんに話した時のこと。

 うっかり、誘われた組織の名称を聞き忘れてしまったことに気が付いた。

 まあ、もともと興味もなかったので仕方がないのだが。


「オレとテリー組長はその組織の名称を知っているぞ。有名だからな。でも、ただ教えるんじゃ面白くない。そうだ、大喜利だ。ブンゴ、その名称を当ててみろ。ただしオレたちを笑わせるようなやつだ」

 浦辻さんはノリノリだった。

 よし、受けて立とうじゃないか。


「はい、”怒れる蛇”」

「それは担任の特徴だ。もっと面白く」

 浦辻さんにバッサリ。

 今のは自分でもイマイチな感じだった。

 よし、それなら、

「確か、彼奴等は政府とか公務員中心だから”親方日の丸ズ”」

「全然ダメだ」

 またもやバッサリ。

「なら、”我らは異能力を持っているからパンピーとは違うのよ”」

「長すぎる」

 バッサリ。


「ヒントをお願いします」

「う~ん。そんなに古めかしい言葉じゃない」


 気を取り直して、機関銃のように答えてやった。

「”退魔イッチング美和子先生”」

「”血税吸血鬼”」

「”邪神に弱く、民間人に強い”」

「”聞いてもいないのに組織の武勇伝を無理やり聞かせる集団”」

「”霊感ある人つどえ、お祓い手当充実しています”」

「”退魔ッてるね、はらッてるね”」


「ダハハハハ」

 最後の答えが受けたらしい。


「これから邪神を巡っていろんな組織が動いているのにこんな馬鹿なことをやってていいんですか?」

 僕の問いに、

「言ったじゃないか。宇宙はユーモアを好む。事の深刻さを諧謔かいぎゃくとユーモアとジョークで帳消しにするんだ。笑い飛ばすんだ。下だらなければ下らないほどいい。最後の答えはなかなか良かったぞ」

 ドスの利いた声でテリー組長が答えた。


 テリー組長に認めてもらえたので僕は満足して帰宅した。

 そして、柴美和子しばみわこ先生の属している組織の本当の名称を聞き忘れた事に気がついた。


 でも、別にいいか、と思った。

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