第18話 それから

 あの体育館での襲撃事件以降、二年一組の雰囲気は変わった。

 理由は明らかだ。

 ムッチーこと遠藤睦美えんどうむつみとアッキーこと黒田明子くろだあきこの二人が学校に来なくなって約ひと月半は経っている。

 なぜなのかはわからない。特に届けも出ていないようだ。四月初めの僕のように引きこもっているそうだ。

 

 こんな状況になれば普通は担任の出番となる。

 しかし、担任の風間先生も時を同じくして学校を辞めてしまった。一応、表向きの理由としては実家の母の介護をするとのこと。


 退魔組織・神の御業みわざがらみなのだろうか。それとも逃げ足が早いだけなのだろうか。

 戦いには勝ったが、三人の不在がかえって不気味だった。


 親友の相馬そうまは大好きだった遠藤さんがいなくなったことでかなり落ち込んでいた。だが、ある日から吹っ切れたように無理やり明るい性格になった。無理して明るく振る舞っているので見ていて痛々しい。


 すべて僕のせいなのか、と自問自答をした。

 イヤ、絶対に僕のせいじゃない。やらなきゃ僕が殺されていたのだ。

 それに戦いが終わればノーサイドになるのはスポーツの鉄則。個人的な恨みはなかったし本当は彼女たちと友達になれたかもしれない。


 それでも罪悪感でいたたまれない時もある。そんな時はいつも、部屋で一人、スマホで撮った二人の写真をしみじみと眺める。

 失神してお漏らしをしたアッキーの写真。

 SM嬢のようなボンデージ衣装で、胸があらわになったムッチーの写真。

 在りし日の二人の思い出にしばし浸り、改めて自分は悪くないと自分に言い聞かせるのだ。

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