第7話 占い師
ゴールデンウィークも半ばの昼過ぎ。
たましずめ組の事務所のドアからノックの音がした。
ドアを開けたらいかにも易者然とした格好の中年の男が立っていた。
「おや、見かけない顔だ。新入りさんかな」
易者は僕に向かってそう言った。
「え~と、仕事のご依頼でしょうか?」
「いいや、独立祝いを渡しに来たんだ。テキサスの荒馬にね」
八の字ひげを上げて彼は笑った。
「おっ! 浦辻さん。むさい所だが上がってくれ」
奥からテリー組長が出てきて易者を中に入れた。
その後、お互いの紹介が済んだ。
易者は『予言者・
「テリーさん、いやテリー組長。気をつけなさい。総裁はカンカンに怒っている。組織の依頼人たちをあなたに奪われたと信じている」
「フン、あんな能無しに何ができるものか」
浦辻さんの忠告にテリー組長は鼻を鳴らした。
「それが、総裁はヤバイ奴らを雇い始めた。人員不足解消というよりかは裏切り者にけじめを付けさせる為だと思う」
「ヤバイ奴らの名前を教えてくれ」
テリー組長が浦辻さんに聞いた。
「こんな業界だから通り名しかわからないが……。恨み節のマーサ、鳩殺しのクロウ、火付けのレッド、口車のペラ、そして前科三犯のアバシリ。以上五名」
「札付きばかりだな」
呆れてテリー組長は言った。
「それで浦辻さんはいつまで『神の
「実は今日で辞めてきた。何かと言えば俺から金をむしり取るしカルト化しようとしているし。ただ報復が怖いし個人でやっていくには不安だからここで雇ってくれないかな。テキサスの荒馬のもとならそう手出しはできないだろうし」
「浦辻さんなら大歓迎。予言者と言われるくらいの占いの腕前をぜひ活かしてほしい」
こうして僕に後輩ができた。といってもキャリアや年齢では向こうが先輩なのでヒエラルキーでは僕が一番下っ端のままである。
「ブンゴ、仲良くやっていこう。そうだ、挨拶代わりにブンゴを占ってみよう」
浦辻さんはそう言って水晶玉をテーブルの上に置いた。
「視える、視える、視えてきた。君はゴルデンウィークが終わったら学校に行ってお祓いをしようとしているね。それ、かなりの確率で死ぬからやめときなさい」
「えっ!?」
不意打ちだった。なぜ僕の決意を知っているのだろう。
「忠告はしたがおそらくブンゴは無視するだろう。そして死ぬだろう。だから死後も占ってみた。君は異世界に転生する。そこでのんびりとスローライフを送る。そこそこ可愛い嫁をもらってね。なんだ、死ぬのも悪くないんじゃないか」
大真面目な顔で浦辻さんは言ってのけた。
僕は果たして浦辻さんと仲良くやっていけるのだろうか。
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