第6話 私。

みんな帰っていった。

ひとりポツンとファミレスに残された私。


思い返してみると、皆それぞれが男女関係に翻弄されている。

それも当然か。だって、この世は男と女しかいないのだから、当たり前だ。


孤独だ。私は、高校の授業で残されたメモ帳を取り出して、ひとり頭を悩ませていた。クラスの問題児に、どうやって接すれば良いのか皆目検討がつかない。

私のようなたいして経験のない講師に、一体何ができようか。

生徒というひとりの人間に、生きる道を教えてあげるほどの人徳は無い。


悩む。悩ませる。考える。考えさせられる。

それでも答えは見つからない。考えて答えが出るほど楽な職業ではない。

逃げたい。逃げ出したい。

みんなのように、異性に身を委ねる事ができれば、どんなに楽だろう。

限界だ。ひとりでは限界だ。

誰かに助けて欲しい。どんな方法であれ助けて欲しい。


窓を眺める。晴天が広がる。青い空と脈動する雲。

素晴らしい。なんて、この世は素晴らしいのだ。


どうでもいい。もう、どうでもいい。

考える事なんて無意味だ。だったら考えなければいい。考えさせられなければいい。

ふと、まわりを見渡す。すでに夕暮れまえの昼下がり。ガランとした店内。

残っているのは、隣のうるさい大学生と、店の店長だけ。


ああ……またいつもの、悪夢が繰り返されようとしているのか。

だが、ふと私の気持ちは楽になる。今までの重い気持ちが消化されていく。

だったら、そうすればいい。身を委ねて楽になればいい。


ふと気が付くと、店の店長と目が合う。

スマイルだけがとりえの、何の魅力も無い男の視線。

私は席を立つと、無言のまま、店長にレジでお金を払う。


「今日も、あの子たちに可愛がってもらうんだね」


店を出る。そのあとに続く、大学生の男たち。

車に乗り込もうとする付近で、私の体はそいつらにまさぐられる。

いつもの事だ。そして、その大学生を車に乗せたまま、私は車のキーをまわす。


私の体は、彼らにもてあそばれ、そして、私も、もてあそぶ。

女友達の中で、私が一番の幸せ者だと自負している自分がいた。    おわり

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ファミレス不倫物語 しょもぺ @yamadagairu

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