第5話 よにんめ。

よにんめ。 『灰田 乙子 (はいだ おつこ)』 45歳。


彼女はとってもグラマーだ。

おっぱいもデカイし腰もくびれおしりも肉質が魅力的だ。

そんな彼女だからこそ、言い寄ってくる男性はとても多い。

でも、今回はちょっと毛色が違いまして……


「実はさぁ、相手は高校生なんだよね」


思わず全員がジュースを噴出した。

45歳のオバさんが、10代の子供と関係を持ったという事実。

この女ならやりかねない……皆は一同そう思ったに違いない。


話を要約するとこうだ。乙子は、パート先の大手スーパーに勤めている

そこのアルバイトの高校生と持ち場が同じで、意気投合し、関係を持つ。

なさそでありそな話だが、ここに実際にあった。これは間違いなくいけない不倫……かと思うとそうではない。


乙子は、数年前に旦那を交通事故で亡くしている。子供もまだ小学校の低学年なので、大変だと思う。そんな 乙子だが、グラマーで魅力的な彼女なので、浮いた話は今までいくらでもあった。今回の高校生の話も、まぁなんだか彼女らしいといえばそうだ。


その高校生は、女性の経験が初めてなので、さかりのついた猿のように体を求めまくるらしい。無限の性欲と無限の追求心。猿にもなりますわ。


それでも、 乙子はやはり魔性の女だ。求められ、吐き出され、包まれ、磨かれる。なんだかさらに綺麗になっているような気がする。いけない関係ではあるが、全く女にとって悪い事ではないかもしれない。皆は妙に納得していた。 乙子の話が一応終わったその時。


「生田さん、いらっしょいませ。ごゆっくりしていって下さい。」


突然、そこに現れた店員は、私の苗字を呼ぶ。この男は店の店長だ。以前、私が教師になる前にアルバイトしていたので面識がある。いつも気軽に声をかけるスマイルが上手なだけの男。興味はない。


「やだぁ、なかなかのイケメンじゃない!」


イケメン好きのブーちゃんが奇声を上げる。うるさくて仕方がない。隣のテーブルの大学生たちが、こっちを向いてニヤニヤしている。恥ずかしいったらない。


「そういえば、詩織はないの? 浮いた話」


私に話がふられるが、皆に話せるようなことは何も無い。


「あんたは学校の生徒ひとすじだもんね!」


皮肉のようなフォローサンキュー。うれしくない。

さて。皆の話もひと段落ついたようで、そろそろお開きにしましょうか。


女たちは、それぞれの場所へと帰っていった。

ある者は、悩みを抱えたまま。

ある者は、見えない未来のまま。

ある者は、暴走する自我のまま。

ある者は、性欲にとりつかれたまま。


そして、私は……                     つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る