第11話
「静香…ごめん遅くなって」
「うううん」
「ここで、私達、出会ったんだよねぇ」
翔は会見が終わったら、懐かしいこのグランドで待っていほしいと言った
「静香に振られた時もここに来たんだ」
「そうだったの?
そんなことあったね」
「そんなことって。ほんっとらあの時はぼろぼろだったんだからな」
「ごめんなさい」
「でも、あの別れがあったから今があるのかもなぁ」
グランドを見つめる彼を見上げると一筋の涙が流れた
「やべぇっ」
「翔…泣いてもいいよ」
「カッコ悪りぃーじゃん」
きっと、我慢してたんだね
思いっきり泣かせてあげたくて
顔を見ないように彼の後ろに回って背中合わせになった。
堰を切ったように涙を流し始めた彼は、
私の手をしっかりと握ったまま、ひたすら泣き続けた
大きな震える背中から伝わる温もりがたまらなく愛しくて
私も泣いちゃいそうになった。
けど、今日は泣いちゃいけない!そう思って唇を噛みしめた
真っ暗なグランドはシーンと静まり返って…
でも、どこからか、サッカーボールを蹴る音が聞こえるような気がした
きっと、翔にも聞こえてるんだね
「…カッコ悪くなんか…ない
翔は最高の男だよ」
そう言うと急に振り返って私の肩に顔を埋めるように抱きしめた
「最高…な男じゃねぇよ」
「え?」
「最高に幸せな男だよ」
細い静香の身体を強く抱きしめると俺の背中をさすってた手が止まった
どちらともなく何度も重ねた冷たい唇が触れあう度に熱を帯びていく
真冬の澄んだ空気の中、心も身体もポカポカと温かくなった夜だった
「静香…ありがとう」
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