第6話

もし、彼と再び会っていなかったら…

どんな人生を送っていたのだろう

そんなことを考えながら、フラフラと家までの道を歩いてた


玄関を入ると翔の靴があった

嬉しくて、飛び込むように部屋に入った


バタンっ


「翔、帰ってたんだ!」


「うわぁ、おかえり、どうした?慌てて」


「う、うううん、何でも…

あっ、お腹すいたよね、すぐ準備するね」


気持ちを悟られないようにと、すぐにキッチンに向かった


「静香、ちょっとこっち来て」


「何ー?後でいいでしょう」


「いいから、来いって」


グイっと引っ張られ彼の膝の上に。

顔をまじまじと見つめる彼から

目をそらしたくて、首に手を回して抱きついた


「静香、さっき、帰って来た時さぁ、ひっでぇ顔してたよ、顔見せて」


「嫌」


「ふーん、まっいいや」


そう言うとギュっと抱き締め返してくれる彼の大きな手が髪を撫でてくれる


我慢してた涙が溢れてしまった

それに気付かないふりして、優しい声が耳元に響く


「なぁ、何か…あんだろ?」


「ぅん、でもね、まだ…言えないの

……ごめんなさい」


「そっか、わかった」


腕を緩めて涙を拭ってくれる彼が

いつものように笑った


「泣くなよっ」


「ごめん」


「いいって、もう謝らなくて

俺も…静香に言わなきゃいけないことあるし」


「えー、それは言ってよ」


「ずりぃなぁ、お互い様だろ」


「そうだけど…」


俯いた私の胸に手をあてて彼は言った


「静香のここにあることは、静香を苦しめてないか?」


「うん、大丈夫」


「じゃあ、いい

また、今度、話してくれよな」


「わかった。ありがとう、翔」



出会いは偶然

再会は運命


運命って言葉、何処か非日常的で誰もが口にするものでもないと思ってた。

でも、私達が再び巡り会えたのが、運命だとしたら、それは誰の側にもあることなのかもしれない


「…好きだよ」


「んー?なに?誘ってんの?」


「バカっ」


私の唇を舌でなぞってゆっくりと深くなっていくキスに思わず彼のシャツを掴んだ


「んんっ、ご飯…作らなきゃ」


「後でいいよ」



翔…

あなたは私の運命の人だよ




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る