第17話

部屋に入るとすぐ、翔は再び私を強く抱きしめた


「あー、静香の匂いだ。変わってない」


そして、ゆっくりと髪を撫で頬にキスする

額、瞼にも唇が触れ、また、抱きしめる


「翔?」

早くちゃんとキスして…なんて言えないよ


「ん?」

にやりと意地悪そうに笑う


「もう、いいっ」

わかってるくせに。


背を向けようとすると腕を掴まれ、一瞬で腕の中


「静香、愛してる」


翔の強引な深いキス

大好きなあなたのキス

私はもうそれだけで溶けてしまいそうになった


「ねぇ?静香先生を抱きたい。いい?」

冗談っぽくあなたが言う


「いいよ」

私の方から翔の首に手を回した


高校の時とは違う大人になった翔

彼にすべてを委ねた


あなたの熱い吐息を聞いているだけで心も身体もフワフワと夢の中にいるようだった


Londonのilluminationが窓から差し込む部屋で、私達は会えなかった時間を埋めるように何度も抱き合った


翔は私を幸せにしてくれた

優しく、強く、愛してくれた



【求め合っていれば、幾世の時が流れても巡り会える】



五十嵐先生の言葉を思い出して、自然と涙が溢れた


彼は涙をそっと拭い、頬を寄せた



そして……

私達は初めて朝を迎えた


あなたの腕の中で目覚めると、隣で眠る翔の睫毛が朝陽に照らされてキラキラと光ってる


私は大好きな彼にキスをして囁いた


愛してるよ……翔

.

.

.

.

クリスマスの朝

五十嵐先生から大きなTeddy bearが届いた

私はすぐにお礼の電話をした


「五十嵐先生、クリスマスプレゼント、ありがとうございます。……でも、どうして?」


「あの、えっと……先生、今お1人ですか?」


「いえ、隣に」


「そうですかぁー。良かったぁ。

いやっ、実はね、クリスマスプレゼントは彼だったんですよ。

でも、もし、もしもですよ、彼があなたに会いに行かなかったら、私はクリスマスプレゼントが届くかも?と嘘をついてしまったことになる。悲しませてしまっては申し訳ないと…

っでね、念の為に大きなクリスマスプレゼントを。

ハハハぁ、やっぱり私の取り越し苦労でしたね」


「先生、ありがとうございます。

私にとって世界中探しても見つからなかった最高のクリスマスプレゼントです」


そんな話をスヤスヤ眠る翔の寝顔を見ながら話してた


私達は遅い朝食を食べ、Londonの街へ出掛けた


さっきの五十嵐先生の話を彼にすると

「フッ、五十嵐先生らしいな」

って笑った


先生は私達にとって、一生忘れてはいけない人だねって話した


手を繋いで寄り添って歩く

もう、誰に見られても構わない



ビッグベンの鐘が鳴った


「へぇー、ビッグベンって本当に鳴るんだぁ」


「そうよー。ちゃんと15分おきに鳴るんだよ」


「ふーん」


翔は高くそびえたつ鐘を見上げながら言った


「静香、結婚しようか」


「え?」


彼の顔を覗きこんで聞き返すと、今度は少し屈むように視線を落として、私の目を見てしっかりと言った


「静香、結婚してください。

30歳までに結婚したいって言ってただろ?

間に合ったよ」


照れくさそうに顔をくしゃくしゃにして笑った


「うん…翔、ありがとう。

……よろしくお願いします」


私は深く頭を下げた

今までの思いが込み上げてきて、また、涙が溢れそうになり、慌てて、Londonの空を仰いだ


「あっ、また、雪降ってきたよ」



30歳までに結婚することが夢

そんなこと夢でも何でもなかった


あなた、翔と結婚することが本当の夢だったんだよ


私の夢……叶ったよ


そんなことを思ってると思わず笑みがこぼれた


「静香?何笑ってるの?」


「なんでもないよー」


「気になるだろ。教えろよ」


「教えなぁーい」


いつか、話すよ

これから、ずーっと一緒だもんね


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