第16話

こっちに来て、もう、何年たっただろう。

すっかり、仕事にも生活にも慣れた


今日はクリスマスイブ。

ケーキでも買って帰ろうかなぁ

真冬の空を見上げた時……電話が鳴った


「もしもし、川崎先生?」


「五十嵐先生?!お久しぶりです。お元気でしたかぁ?」


「私は相変わらず、元気にやってますよ。

先生のこと友人から聞いています。よくやってくれて、いい人を紹介してくれたと喜んでましたよ」


「いえいえ、とんでもありません」


「ところで、いきなり、不躾なことをお聞きしますが、川崎先生、いい人、出来ましたか?」


「いえ、お恥ずかしい話、まだ1人です」


「そうですかぁー!今日はクリスマスイブ、サンタさんから大きなプレゼントが届くかもしれませんよ」


「フフフ、なんですかー。五十嵐先生も意外とロマンチストですよね」


「まぁねぇ。では、素敵なクリスマスを。

メリークリスマス」


「メリークリスマス」

.

.

.

.

私は近くのデリでケーキを買い、Londonの外れに建つ小さなアパートへと向かった


街はChristmas illuminationがキラキラと輝きを放ち、幸せそうな家族の笑顔、肩を寄せ合う恋人達


雪が降り始めた。

早く帰らなきゃ


足を早め、アパートが見えてくると、

ドアの前に白い息を吐きながら、1人の男性が立っている。

ゆっくりと恐る恐る近付いた



それは、紛れもなく…

翔だった



「静香」


「翔?どうして?どうしてなの?」


全身の震えが止まらない

立っていられなくて、ふらついた私を翔は

慌ててしっかりと抱きしめてくれた


「静香…会いたかった。

俺はいつか会える。絶対この手で抱きしめるんだって思って、今まで頑張ってきた」


「俺……夢、叶えたよ」


彼は抱きしめる力を緩めて両手で私の冷たい頬を包んだ


「静香の存在があったから、ここまで来れた。

あの時、あの場所で静香に出会ってなかったら、今の俺はいない」


「もう、誰が何と言おうと離したくないんだ。……離せない。

絶対、離さないから…。いいよな?」


今度は私の方から強く抱きしめ返した


「翔…ぁいたかった……会いたかった。

ほんとに…会いたかったよー」


涙を流しながら、彼の腕の中で何度も言うと、翔も泣いているようだった


私の肩ごしに声にならない声で「うん、うん」と頷いていた


私達の頬をつたう温かい涙が舞い降りてきた雪を溶かしていた





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