第14話

私は高校を辞めた


親は実家に帰ってきなさいと言ったが、

結局、翔との思い出が詰まったこの地から離れられずにいた


とりあえず、当面の生活費を稼ぐ為、近くのカフェでアルバイトをしていた


そんな生活がズルズルと続き、

1年が過ぎようとした頃、バイト先に五十嵐先生がいらっしゃった


「川崎先生、お久しぶりです。お元気ですか?」


「お久しぶりです。はい、元気にしています」


「そうですか。良かった。今日は川崎先生にいいお話を持ってきました」


そう言って、五十嵐先生はカバンの中から、パンフレットのような物を取り出した


「この会社、私の友人がやっているんです。先日、いい人はいないか?と相談されましてね。すぐに川崎先生を思い出したんです。

どうです?先生。行ってみませんか?

ここにいても、時間が止まったままになってはいませんか?」


五十嵐先生にそう言われてハッとした

その通りだったから。


いつまでも翔のことを思い続けていても、

何も変わらない


「少し、考えさせてもらってもいいですか?」


「わかりました。いい返事を期待していますよ」


私は1歩踏み出さないとと思っていた



2日後

五十嵐先生に電話をした


「先日のお話、お受けします。

よろしくお願いします」


「決心してくれましたか。

では、すぐに先方へ連絡しておきます。

急なんですが、出来れば来週には出社してほしいとのことです」


「はい、わかりました」


「それと、吉沢くん、大学でサッカー、頑張ってるそうですよ。もう、すっかり中心選手らしいです」


久しぶりに聞く名前に嬉しさが込み上げた


「そうですかぁ。頑張ってるんですね」


「みたいですよ。川崎先生、あなたも負けていられませんね」


「はい、そう思います。

五十嵐先生、ありがとうございます」


そして、1週間後、

翔との思い出がたくさん詰まったこの部屋を後にした

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