第13話
しばらくして、2学期が終わり、冬休みに入った
俺はあれから、ずっと学校を休み、静香とは顔を会わせていなかった。
ただ、毎日、ぼーっと過ごし、気が付くと涙が流れてた。
もう、何もかも、どうでもよかった
そんな時、五十嵐先生が家まで来てくれた
「最近はどうしてるんだ?」
「は?何が?」
「サッカーはもういいのか?」
「いい、わけ…ねぇよ」
「吉沢は…何の為にサッカーをやってるんだ?
自分の為か?
誰かの為か?
地位や名声の為か?」
そう言われて、答えに困った
今まで、そんなこと考えたこともなかった
「難しい質問だったな。
とにかく、3学期は学校に来るんだぞ。
友達も皆、心配してるぞ。わかったな」
俺は黙って頷いた
サッカーは好きでやってた
何の為?と言わても困る。
でも、何日も考えて、1つだけ答えが出たのは…
きっと、
俺がサッカーを辞めてしまったら、静香が悲しむこと、
サッカーを頑張ってる俺を見ると静香が喜ぶこと
簡単なことだった
俺はやるしかないと思った
.
.
.
.
3学期に入り、卒業まで1ヶ月
私は翔の卒業と同時にこの学校を辞めることを決めていた。
誰も知らないこととはいえ、教師という立場を考えなかった行動
そして、
何よりも翔を傷つけてしまったことの罰をうけたかった
自分の中で彼への謝罪の言葉を繰り返すだけではなく、誰かに罵ってもらう方がどれほど楽だろう
自責の念にかられ、心がつぶされそうになってた
翔は落ち着きを取り戻し、サッカーも以前よりも増して力を入れているようだった
これで良かったんだ
いつか時が過ぎて
高校時代を振り返る頃、
あんな先生もいたよなって笑って話せる日が来るんだよ
グランドを走るあなたを見つめながら、そう語りかけていた
.
.
.
.
卒業式
翔と会うのも今日で最後
彼は私がここを辞めることを知らなかった
式典が終わり、友達とはしゃいだり、先生方と写真を撮ったり、ざわざわとする中、遠くから翔の視線を感じた
私が彼に気付くと、翔は深々と頭を下げた
長い、長い丁寧なお辞儀だった
そして、頭を上げると、ニコリと笑い、手を振った
翔の優しくて、あったかい、あの笑顔
胸の奥が熱くなった
そんな彼にどう返していいかわからなかった。
ただ…泣いちゃいけないと思った
一回りも二回りも大きくなって卒業していく彼を私も笑顔で送り出さないといけない
…そう、思った
そして、私も精一杯の笑顔で手を振った
翔、頑張れ!
私も頑張るよ。
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