第11話

翔との幸せな日々が続いてた。


そんなある日

保健室をノックする音


「はい」


「五十嵐です」


「あっ、教頭先生、どうぞ」


「川崎先生、今、少し、お時間大丈夫ですか?」


「はい、どうかしましたか?」



「うーん、回りくどいのは嫌いなのではっきり、言いますね。

川崎先生は吉沢と付き合ってますよね?」


息が止まるかと思った

どうして、五十嵐先生が…

誰にも言ってないし、学校では一切、怪しまれる素振りもしていない


私は返事に困ったが、しばらく考えて、はっきりと答えた


「はい」


ここで嘘をつくことは翔の存在を否定することになる

そう思い、私は素直に認めた



「川崎先生…先生も吉沢もいい加減な気持ちで付き合えるような人間じゃないこと、わかってます。わかった上で言いますね」


「今は、別れた方がいい。吉沢のことを思うなら…。

彼はサッカーで既に大学も決まっています。

今、大事な時期なんです。

私の言いたいことはわかりますね?」



「わかります」


わかってた。充分すぎる程わかってた。

今、私とのことが大学側に知られると推薦は取り消されるかもしれない。

その時点で彼の夢は閉ざされてしまう



「川崎先生、今は辛い選択かもしれません。

けれど、本当にお互いがお互いを求め合うなら……

どんな困難があっても

幾世、時が流れても

きっと、巡り逢えるんじゃないか、と僕は思います」


「彼の"今”を大切にしてあげるのが本当の愛なんじゃないでしょうか」



「……先生のおっしゃること、よく、わかりました。

吉沢くんと…話します」

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