第3話

夏休みの練習

俺は口実を作っては保健室に行った。

少しでも先生と話がしたかったし、近くにいたかった


先生は生徒の中の1人としか、思ってないだろう

でも、俺は先生と話せば話すほど、あの瞳に吸い込まれそうになる。

手を伸ばして、触れたい、抱きしめたい、そんな思いがどんどん大きくなっていった


叶わないとわかっていても、止められない気持ちに潰されそうになってた


そして、夏休みも終わりに近付こうとしていた日、

俺はまた保健室の前にいた


いつも、違ってそっと扉を開けた


先生は相変わらず、窓際に立ってグランドを見てる

俺が入ってきたことに気付いていない


息を殺して、後ろまで行くと先生はかなり驚いた様子で振り返った


その瞬間

俺はその細い腕を引っ張り、強引に抱きしめた


もう、

止められなかった



「吉沢くん、離して!ねぇ、離して」


先生は必死に抵抗してくる

俺は更に力を入れた


どうしても逃げられないと思ったのか先生は急におとなしくなった



「ねぇ、吉沢くん、お願いだから、離して」


今にも泣きそうな弱々しい声で懇願するので、俺はゆっくりと先生を解放した


.

.

.

.

.

.


「すいません。俺…先生のこと、好きに…なったみたいなんだ」



「何、言ってるの?吉沢くん……。私は先生なのよ」



この間から頭の中で繰り返してきた言葉を発した



「そんなもん…

そんなもん、関係ないだろ。

好きなもんは…好きなんだよ」



怒鳴るよう言い放った彼は足早に保健室を去って行った




吉沢くんに抱きしめられて、どうしていいか、わからなかった。


相手は生徒なの。

私がしっかりしないといけない。

一生懸命、冷静になろうとしたけれど、私の中の女の部分が見え隠れした。



吉沢くんの腕の中でその温もりを愛しいと思ったことに戸惑った


ちょっと背伸びしたいという若い頃にはよくあること、

すぐに同世代の彼女を作るんだよ

その方が彼にはいいに決まってる



息が苦しくなるほど、強く抱きしめられた腕

頬に押しつけられた熱い胸

荒くなった呼吸

すべてを必死で頭の中から追い出そうとした


でも…

身体に残る感覚がどうしても彼を忘れられずにいた

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