第2話

次の日

1学期の終業式の日

吉沢くんはお休みだった


(やっぱり、具合悪いんだなぁ。

もう、休みに入るけど、夏休みは部活で出てくるのかな…。

やだっ、私、何考えるのっ)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



春…

練習中に遠くの窓際に立つ女性が視界に入った


(新しい先生かな?)


俺はその涼しげな瞳と透き通るような白い肌にドキッとした


たぶん…一目惚れだったんだろう

いつも、あの窓を見てた


川崎 静香…先生


その時はまだ、名前だけしか、知らなかった



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夏休みに入ったが、私はだいたいの日は登校していた


研修の資料作りや課外活動の付き添いなど仕事はあったし、

心のどこかでサッカー部の彼のことを気にしてたのかもしれない。


でも、

彼は5つも年下の生徒

恋愛感情とは違うものだと信じたかった


そんなことをとめどなく思っていると、保健室の扉が勢いよく開いた


「先生ぇー、怪我したから診てよ」


今、頭の中にいた吉沢くんの姿にびっくりした


「え?どこ?」


私は必死で平然を装って、教師っぽく少し偉そうに言った


「もっと、優しくしてよー。静香せんせ!」


「どうして、私の名前知ってるの?」


「先生の名前知ってても、おかしくないだろ?早く、やさしーくしてねぇー」


「もっ、先生をからかわないの!」


「はぁーい」


私は手際よく手当てをした


「はいっ、出来たよ。あんまり、無理しないようにね。また、倒れちゃうよ」


「先生、俺のこと、心配してくれてんの?」


ニヤニヤしながら、覗きこんでくる吉沢くんの顔が近づいてくる。

咄嗟に肩を押した


「あ、当たり前でしょ。先生なんだから」


「ありがと。気を付けまぁーす」


そう言いながら、保健室を後にした彼の背中に向かって、心の中でもう一度繰り返した



(先生なんだから…)

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